毒キノコ界の王!カエンタケの恐怖
カエンタケという名前はご存知の方も多いことでしょう。 毒キノコの頂点に君臨するまさに恐怖の大王です。 見かけたら絶対に近づいてはいけません。
カエンタケの分布
カエンタケはブナ科の樹木の近くに生息しています。 つまり、ブナ科の樹木の生息域である本州・四国・九州に広く見られると言うことができます。 みられる季節は初夏から秋にかけて。いわゆるナラ枯れによって立ち枯れした木や倒木の近くに生息しています。
カエンタケの外観的特徴
カエンタケは非常に特徴的な外観をしています。 ・色:朱色~赤。先端に近づくほど色が濃くなる※まれに白いものもある。 ・形:まさに火炎のような形。
先端は鹿の角や赤ちゃんの手の指のように枝分かれしている ・大きさ:10~13㎝程度 おそらく見間違えることはないでしょうが、中には白みがかったカエンタケや冬虫夏草に似た外観の場合もあるので注意が必要です。
食べるだけじゃない!最強の毒キノコは近づくだけでも危険!
カエンタケに触るだけでも症状が出る
一般の毒キノコは触れるだけであれば特に問題ありません。 ですがカエンタケだけは違います。 触れるだけで皮膚に炎症を起こします。
特にカエンタケの汁(赤い)は非常に強い炎症作用を持ち、あっという間に皮膚がただれ、表皮が剥がれ落ちてしまいます。 火傷のような症状のため、痛みも強く治療にも時間を要します。
空気中を漂う胞子ですら危険!
空気中を漂う胞子の中にも毒成分が含まれているため、皮膚や粘膜が敏感な人は近づくだけで症状が出る可能性があります。 胞子が眼に入ったり、吸い込んでしまったりすると、粘膜に激しい炎症が起こり、びらんや潰瘍を作ることもあります。
カエンタケらしきキノコが視界に入ったら、極力その場を離れるようにした方がよさそうです。
致死量わずか3グラム!食べるとどうなる?
このように、体内に入らなくても激しい症状をもよおすのがカエンタケです。 そんな生物兵器ともいえるキノコを食べてしまったら一体どうなるかは想像に難くないですね。
カエンタケの致死量はわずか3グラムです。 3グラムというとティースプーン1杯程度です。 そのような微量でも人を死に至らしめるのがカエンタケです。 体の中ではどのようなことが起こるのでしょうか?
カエンタケ摂取後数十分で現れる症状
一般的な毒キノコ同様、摂取後30分程度以内に激しい消化器症状が現れます。 ・腹痛 ・嘔吐 ・下痢 などです。
ちなみに、吐物が皮膚に付着してしまうと皮膚炎をおこしますので、吐物を処理する際は必ずゴム手袋を着用しましょう。
カエンタケ摂取後数時間で現れる症状
激しい消化器症状に続いて、数時間以内に神経系の症状が徐々に現れてきます。 ・悪寒(寒気) ・手足のしびれ ・頭痛 ・発熱 また、口や喉などの粘膜を刺激しますから ・のどの渇き ・のどの痛み ・口内炎 などの症状がみられるようになります。
カエンタケ摂取後24時間から現れる症状
体内に吸収された毒成分は徐々に全身を侵していきます。 消化器はただれ機能不全に陥ります。 また、腎臓や肝臓などの重要臓器も機能不全を起こします。 毒が呼吸器系にも及べば呼吸困難も併発することとなります。
さらに造血機能にも影響を及ぼすため、白血球や血小板が減少します。 すると感染症にかかりやすくなったり、ただれた粘膜からの出血も止まりにくくなったりします。 こうなると生命維持は大変困難となります。 カエンタケは致死率が非常に高い毒キノコなのです。
カエンタケの影響は脳にまで及ぶ!延命しても後遺症はほぼ確実!
カエンタケの毒は当然脳にまで到達します。 摂取後数日のうちに脳萎縮を起こし、言語障害や運動障害、麻痺などが現れます。 脳細胞は他の臓器とは異なり、再生することはありません。
たとえ九死に一生を得たとしても、その後は確実に後遺症を残すことになります。
それだけではありません。 皮膚は炎症後痕を残すことになり、脱毛も起こります。 美容や外見にも後遺症は及ぶことがあるのです。 まさに人生そのものを奪ってしまうのがカエンタケなのです。 絶対に興味本位で近づいたり食べたりしてはいけません。
分岐点は摂取後数十分!カエンタケ摂取後の治療法とは?
ほぼ確実に死や後遺障害を招くカエンタケ。 治療の分岐点は摂取後数十分間です。
胃洗浄や小腸洗浄
カエンタケを摂取した直後の消化器症状の段階で行われる処置です。 この段階で毒素を体外に排出することができれば、延命の可能性が高まり、後遺症の可能性も低くなります。 ただし、このような処置は総合病院などの設備が整った施設でしか受けられません。
そして胃や腸の洗浄はカエンタケ摂取後数時間が経過してしまっては受けることができません。消化器から肝臓や腎臓・血液まで及んでしまえば、消化器を洗浄しても意味がないからです。
なにより、胃や腸の洗浄は大変な苦痛を伴う治療法です。 カエンタケは決して面白半分で摂取してもいいキノコではないのです。
血液透析
胃洗浄が間に合わない場合、次に行われるのは血液透析です。 血液内に毒がまわった場合、血流によって全身に毒素がめぐることになります。こうなると多臓器不全を起こし、致死率は大変高くなります。
臓器への影響を少しでも減らすために、透析を行い血液中の毒素を取り除くのです。 血液透析では主に腕の血管にチューブを繋ぎ、血液をフィルター内に流します。そして、フィルターで毒素を取り除いた血液を再び体内に戻すのです。
当然、血液透析には大きな設備が必要とされますから、治療が受けられる施設は限られます。 また、全身の血液をろ過するには数時間かかり、費用も大変高額となります。 たとえ血液透析を行ったとしても、いくつかの臓器には障害が残ることは避けられないでしょう。
皮膚炎の治療
カエンタケによる皮膚炎は火傷のような状態をもたらします。 皮膚炎が表皮のみでとどまっている場合はステロイド薬の塗布を行います。 炎症がひどく真皮まで到達している場合は、ステロイド軟膏に抗生物質を使用し、最悪の場合は皮膚移植が必要となる可能性もあります。
脳障害の治療
カエンタケの毒が脳まで回ってしまった場合、基本的には治療法はありません。 一度傷ついた脳細胞は二度と再生することはないからです。 そのため、脳障害に対する治療は基本的にはリハビリとなります。
リハビリには年単位を要することも珍しくはありません。にもかかわらず、リハビリを行ったとしても以前と同様の状態にまで完全に機能を回復させることはほぼ不可能でしょう。
傷害された部位によって起こる障害は異なります。 そしてリハビリはできるだけ早期に始めなければ効果を期待することが難しくなるのです。
治療はできるだけ早く!受診時に伝えることは?
カエンタケの症状や危険性についてご理解いただけましたか? カエンタケの中毒を最小限にとどめるためには、何よりも早期の受診が欠かせません。 救急車を呼んでも問題ないでしょう。
その際、医師や救急救命士に伝える情報をまとめました。 ・カエンタケを食べた(可能性がある)こと ・食べた時間 ・食べた量 ・現在の症状 ・症状が現れた時間 です。 カエンタケを一緒に食べたり、吐物に触れた人がいたりした場合、たとえ症状が出ていなくても必ず受診が必要です。
小さな子供からは絶対に目を離さないで!
カエンタケの時期は山での行楽シーズンと重なります。 家族でハイキングや登山などを楽しまれる方も多いでしょう。 小さな子供がいる方は特に注意が必要です。子供は臓器の発達が未熟で、毒物に対して非常に強く影響を受けます。
また、代謝が活発なため、毒素が体を巡るスピードも大人よりも速いのです。
カエンタケの色や形は子供の興味を引きやすく、手を触れたり口に入れたりする危険性があります。 山に入る際はお子さんから目を離さず、周囲にカエンタケが生息していないか十分に観察を行ってください。
「たかがキノコ」と甘く見てはいけません!
カエンタケは毒キノコ界の頂点に君臨する大変危険度の高いキノコです。 「たかがキノコ」と軽く考えてはいけない相手なのです。 いわば天然の生物兵器。それがカエンタケです。
ちょっと触ってみよう 少しくらいなら口に入れても平気だろう どんな味か気になる お腹が痛くなったけど、キノコを食べただけで病院にいくのもなあ…もう少し様子を見てみよう
もしあなたが今後の人生も楽しみたいのなら、このような考えは今すぐに捨ててください。
わかりやすい動画をご紹介
カエンタケについてわかりやすくまとめている動画をご紹介します。
まとめ
参考になりましたでしょうか? 今回ご紹介させていただきましたが、毒キノコを見分けるのは非常に難しいです。そのため、知識を蓄えることはもちろん、しっかりと専門家に相談することをオススメします。
自分の判断だけでは、危険な目にあってしまうかもしれません。 少しでも今回の記事が参考になっていただけたら嬉しいです。