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天然記念物「ヒトツバタゴ」とは?特徴や育て方を解説!花が咲かない原因は?

開花時期になると、雪をかぶったかのような見事な姿を見せてくれる、ヒトツバタゴの特徴や育て方をまとめました。ヒトツバタゴは天然記念物にも指定されている、貴重な植物です。挿し木や種まきで上手に増やして、大切に育ててあげましょう。
2020年8月27日
吉岡てんぱ
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ヒトツバタゴとは

ヒトツバタゴは、モクセイ科に属する樹木で、雌雄異株の品種です。雌雄異株というと、雄花のみ咲かせる株と、雌花のみ咲かせる株の2種類があるイメージが強いですが、ヒトツバタゴは違いまず。ヒトツバタゴは、雄花のみ咲かせる株はあるものの、雌花のみ咲かせる株はありません。つまり、ヒトツバタゴの木は、雄株と、両性異花株(雄花も雌花も咲かせる株)の2種類のみが存在するという、不思議な樹木であることが、近年発見されました。

ヒトツバタゴは、生長が旺盛な樹木で、大型のものになると、日本では15m、海外では30m以上の高さになることもあり、花が咲くと、圧倒的な存在感があります。ヒトツバタゴはの原産地は東アジア地方で、朝鮮半島や台湾、中国をはじめ、日本でも、長野県、岐阜県、愛知県、長崎県などが自生地として知られています。いずれも、貴重な自生地ということで、保護活動がすすめられています。

ヒトツバタゴの名前の由来と別名

ヒトツバタゴの名前の由来

「ヒトツバタゴ」とは、「一つ葉のタゴ」という意味です。タゴとは、ヒトツバタゴと同じく、モクセイ科に属する樹木「トリネコ」のことで、この2つの樹木は樹形と花のつきかたが、とてもよく似ていると言われています。

つまりヒトツバタゴを言い換えれば、「一つ葉(単葉)のトリネコ」という意味になります。ちなみに、トリネコはヒトツバタゴとは異なり、複葉(小さな葉が集まって、1つのまとまりになってついている品種)なので、葉を見れば、違いは一目瞭然です。

ヒトツバタゴの別名

ヒトツバタゴには別名があり、「ナンジャモンジャノキ」と呼ばれることがあります。ただ、「ナンジャモンジャ」という別名を持つ樹木は、ヒトツバタゴのほかにも、クスノキ、ニレ、イヌザクラ、ボダイジュなどもあるため、混同を避けるためにも、品種を特定して会話するときは、「ヒトツバタゴ」と呼ぶのが、無難かもしれませんね。

ヒトツバタゴは天然記念物かつ絶滅危惧種

ヒトツバタゴ自生地が国の天然記念物に指定

ヒトツバタゴの自生地は、2か所が国の天然記念物に指定されています。1つ目は、愛知県犬山市、岐阜県瑞浪市、恵那市、中津川市のにまたがる自生地で、2つ目は、長崎県対馬市にある自生地です。また、岐阜県恵那市や中津川市の一部は、岐阜県の県指定天然記念物に指定されています。

ヒトツバタゴの樹木自体が国の天然記念物に指定

ヒトツバタゴの自生地以外にも、ヒトツバタゴの樹木自体が、国の天然記念物に指定されている箇所もあります。天然記念物に指定されいるヒトツバタゴは、岐阜県土岐市泉町白山神社境内にある、ヒトツバタゴです。国の天然記念物に指定されたヒトツバタゴは、高さが15mにもなる大木8本で、同じく国の天然記念物に指定されたハナノキの側で大切に育てられています。


ヒトツバタゴは絶滅危惧種にも指定

ヒトツバタゴは、日本では減少傾向にあるため、環境省のレッドリストでは、絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。長野県と愛知県では、県のレッドデータブックでは、絶滅危惧Ⅰ類(Ⅱ類よりも絶滅の危険性が高い)に指定されています。そのため、各地でヒトツバタゴの自生地の保護がすすめられています。

ヒトツバタゴの開花時期

ヒトツバタゴの開花時期は、5月ごろです。開花は一気に進み、短期間で枝の先端に雪が積もったかのように、真っ白な花におおわれるので、とても見応えのある情景に変わりますよ。また、ヒトツバタゴの花は、かすかに甘い香りがするので、開花時期に自生地に訪れると、ほのかな甘い香りが、風に乗って届いてきます。

ヒトツバタゴの実

ヒトツバタゴは、秋になると、直径が1㎝程度の、完熟のオリーブの実に似た、黒い実をつけます。一見、食用にもできそうな見た目の実ですが、鳥も食べない、つまり美味しい実ではありません。ヒトツバタゴの実は、食べるのではなく、目で見て楽しみましょう。

ヒトツバタゴの育て方

ヒトツバタゴの育て方1.植える場所

ヒトツバタゴは、日当たりがよく、水はけのよい場所を好みます。また、先述の通り、30mを越える巨木になる木なので、庭に植える際は、育った時のことを想定し、植える場所を選ぶようにしましょう。特に、建物や壁のそばに植えると、根が建物や壁を圧迫することもあるので、不安な場合は、販売店によく相談してから植えるようにしましょう。

ヒトツバタゴの育て方2.用土

ヒトツバタゴは、有機質が多い土の方が、よく育ちます。ヒトツバタゴは、地植えにすることがほとんどだと思いますが、地植えの際は、しっかり腐葉土やたい肥を梳き込んでから、植え付けるようにしましょう。もし、鉢植えにする場合は、「赤玉土(中粒)2:腐葉土やたい肥1」の割合で作った用土を使用すると、よく育ちますよ。

ヒトツバタゴの育て方3.植え付け

ヒトツバタゴは、観葉植物のような扱をされることもあるため、年間を通して鉢植えを購入することができます。ただ、地植え用に苗を購入する場合は、秋が過ぎ、葉が落ちたころに植え付けるようにしましょう。地植えの際は、多湿を嫌うので、盛り土をしてから、地面より1段高い場所に植えてあげると、生長が早いです。

ヒトツバタゴの育て方4.水やり

ヒトツバタゴは、地植えの場合は水やりをしなくても、よく育つことが多いです。ただし、地植えの場合でも、雨が少ない時期は、土の表面がよく乾いていたら、しっかりと水をやるようにしましょう。鉢植えも同様に、土の表面が乾いたら、水をあげます。

ヒトツバタゴの育て方5.肥料

ヒトツバタゴは、地植えの場合は、1月ごろに緩効性の有機肥料を、ヒトツバタゴの根元に埋めてあげます。鉢植えの場合は、3月ごろに、弛緩性の化学肥料を与えてあげてください。


ヒトツバタゴは挿し木と種まきで増やせる

ヒトツバタゴの増やし方1.挿し木

ヒトツバタゴは、挿し木で増やすことができます。挿し木に利用するのは、新しく伸びた「新梢(しんしょう)」です。挿し木用に、15cmくらい新梢を切り取ったら、根元側の3分の2の部分に生えている葉を取り除きます。挿し木用の新梢の根元側を斜めに切り、3時間程度水を吸わせたら、しっかり湿らせた鹿沼土に、挿します。挿し木をしたら、明るい日陰に置き、乾燥しないようしっかり水やりをしていたら、3ヶ月くらいで根付きます。

ヒトツバタゴの増やし方2.種まき

ヒトツバタゴは、秋に黒い実をたくさんつけますが、実の中には、種があります。そのため、実が白く粉を吹き、熟したことを確認してから、実を割って、種を採取すれば、種でヒトツバタゴを増やすことができます。ただ、種は乾燥すると発芽率が極端に下がってしまうので、実から種を採取したら、すぐに土にまきましょう。

ヒトツバタゴの剪定のやり方

ヒトツバタゴは、生長が旺盛ではあるものの、剪定をしなくても、ある程度樹形を整えながら生長します。ただし、スペースに限りがある場合など、剪定が必要な場合は、葉が落ち切ったあとに、剪定を行いましょう。

ヒトツバタゴは、枝が茂りすぎて、風通しが悪くなった時は、剪定をしてあげても構いません。細かい枝が密集している場所の、いくつかを適当に剪定する程度なら、年間を通して作業可能です。ただし、太めの枝を剪定したい場合は、葉が落ちるのを待ってから、剪定しましょう。

ヒトツバタゴの花が咲かない原因と対処法

ヒトツバタゴの花が咲かないという人が続出

ヒトツバタゴは、庭木として人気があるものの、「開花時期になっても花が咲かない」と悩む人が多いです。ヒトツバタゴの花は、とても美しいことから、ヒトツバタゴの花に憧れて、購入した人も多いでしょう。それなのに、SNSやガーデナー向けの掲示板でも、開花時期近くになると、「花が咲かない」と相談がよく掲載されています。一体、ヒトツバタゴの花が咲かないのには、どのような原因があるのでしょうか。

ヒトツバタゴの花が咲かない原因1.剪定のタイミングが悪かった

ヒトツバタゴの剪定は、葉が落ち切った冬に行うと、株へのダメージが最小限で済みます。しかし、冬に剪定してしまうと、花芽も一緒に剪定してしまうことになります。そのため、花を楽しみたい場合は、開花時期が終わってすぐ、5月中に剪定をするようにしましょう。剪定後も多少伸びてしまうので、冬の剪定よりも株を小さくする効果は低いですが、翌年、花はきちんと咲きますよ。

ヒトツバタゴの花が咲かない原因2.1本のみでは花が咲きにくい

ヒトツバタゴを庭木として植える際、ほとんどの場合1本だけ植えますよね。実は、それが、花が咲かない原因になっているのです。ヒトツバタゴは、雄株と両性異花株の2種がそろっていた方が、花がよく咲くことがわかっています。そのため、庭木などで、花を咲かせたい場合は、小さくてもいいので、もう1本、ヒトツバタゴの木を育ててみるとよいかもしれませんね。

ヒトツバタゴの花が咲かない原因3.木が幼い

ヒトツバタゴは、幼木の内は、なかなか花芽をつけません。中には、10年経っても花芽がつかないという株もあるくらいです。そのため、ヒトツバタゴが大人になるまで、焦らずに、気長に花が咲くのを待ってあげましょう。


ヒトツバタゴとアメリカヒトツバタゴ

アメリカヒトツバタゴが主流になりつつある

ヒトツバタゴは、天然記念物に指定されているため、日本の自生地から採取して、園芸用に活用することはできません。しかし、最近は、アメリカヒトツバタゴと呼ばれる、アメリカ原産のヒトツバタゴが、庭木でも多く利用されるようになりました。

ヒトツバタゴとアメリカヒトツバタゴの違い

アメリカヒトツバタゴは、ヒトツバタゴほど、生長が旺盛ではない上、樹高が最大でも10m程度にしかならないので、ヒトツバタゴよりも庭木向きと言えます。また、アメリカヒトツバタゴは、幼木のころから花をしっかり咲かせてくれるので、先述のような「花が咲かない」というトラブルも避けることができます。

アメリカヒトツバタゴの花は、見た目は、ヒトツバタゴとよく似ていますが、ヒトツバタゴよりも甘い香りが強いです。アメリカヒトツバタゴには、園芸品種も複数あるので、用途に合わせて選びやすいのも、うれしいです。

ヒトツバタゴはガーデニング初心者にも育てやすい

ヒトツバタゴは、施肥や水やりを少々怠っても、元気にすくすく育ってくれるため、ガーデニング初心者にも、育てやすい樹木です。枯れにくく、とても存在感がある美しい植物なので、庭のシンボルツリーとしても、おすすめですよ。ぜひ、ヒトツバタゴを、素敵な庭づくりに、活かしてみてくださいね。

ヒトツバタゴが気になる方はこちらもチェック

ヒトツバタゴと同じく、トネリコのシマトネリコも、庭木として人気があります。また、ヒトツバタゴと同じように、天然記念物に指定されている、オオヤマレンゲも、とても美しい花なので、ぜひチェックしてみてくださいね。