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スイスの至宝「カンチェラーラ」特集!伝説的な強さとその功績に迫る!

世界最速の男、ファビアン・カンチェラーラ。数々の功績を残してきた伝説的とも言われる強さだけではなく、端正なマスクと引き締まった肉体で引退後の現在でも絶大な人気を誇っています。そんなロードレース界のレジェンド、カンチェラーラについて紹介します!
2020年8月27日
sierra14
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伝説のレーサー カンチェラーラとは?

ファビアン・カンチェラーラ(Fabian Cancellara)は1981年3月18日生まれ、スイス ベルン出身の元プロロードレーサーです。186cm 82kgという大柄な体格をいかし、TT(タイムトライアル)レースやワンデイのクラシックレースなどで輝かしい功績を残しました。ツール・ド・フランスでもプロローグを含むTTステージなどで活躍し、トータル29日間 マイヨ・ジョーヌを着用しており、これは総合系(総合優勝を狙うような山岳ステージにも強い選手)ではない選手中では最長の記録となっています。

略歴と主な戦績

2001年 マペイ・クイックステップ(イタリア)にてプロデビュー
2003年 名門 ファッサボルトロ(イタリア)に移籍
2006年 デンマークのCSC(後のサクソバンク)に移籍
2011年 ルクセンブルグのレオパード・トレックに移籍(現 トレック・セガ フレード:アメリカ)
2016年 現役を引退

プロ通算 88勝

ツール・ド・フランス  ステージ 8勝
ツール・ド・スイス  ステージ 10勝 総合 1勝
パリ〜ルーベ  3勝
ロンド・ファン・フラーンデレン 3勝
ミラノ〜サンレモ  1勝
2008年 北京オリンピック 個人TT 優勝
2016年 リオ・デ・ジャネイロオリンピック 個人TT 優勝
世界選手権 個人TT 4勝

など

脚質

基本的にはルーラーですが、細分化して見るとハイスピードでの高速巡航を得意とし、独走力に優れたTTスペシャリストになります。またその独走力をいかした、1日に250km以上を走りきるクラシックレースのスペシャリスト(クラシックスペシャリスト)とも呼ばれています。

次に、カンチェラーラがなぜ伝説的な選手と呼ばれるようになったのか、その強さに関するエピソードを紹介します。

カンチェラーラ 伝説のエピソード 1

速すぎてカメラが見失う

この出来事が起きたのは、2010年のロンド・ファン・フラーンデレン(ツール・デ・フランドル)。
 

レース後半、優勝候補の双璧 トム・ボーネン(ベルギー)と抜け出したカンチェラーラは、247km地点「ミュール・カペルミュール(Muur-Kapelmuur)」に差し掛かります。このレース最大の勝負所でカンチェラーラがシッティングのままアタック。ロケットのような加速でボーネンに勝負を挑みます。

ボーネンにフォーカスしていたヘリコプターカメラがカンチェラーラを映すため引きの映像に切り替えますが、そこにはカンチェラーラの姿はありません。慌ててカンチェラーラを探すヘリカメラ。すると画面の端に信じられないスピードで独走するカンチェラーラが映ります。文字通り一瞬で300m近く引き離したその脚力に、世界が驚かされました。
 

カンチェラーラ 伝説のエピソード 2

メカニカルドーピング疑惑

自転車競技におけるメカニカルドーピングとは、薬物を使用するドーピングとは違いペダリングをアシストするための電動モーターなどをロードバイクに仕込んで機材的なアドバンテージを得ることです。

エピソード1で述べた2010年のロンド、そして後述する同じ2010年(ロンドの1週間後)に開催された「パリ〜ルーベ」で圧倒的すぎる力を見せてしまったがために、カンチェラーラはこの「そんなバカな」と言いたくなる疑惑をかけられ、実際に使用したロードバイクをX線検査されていました。

カンチェラーラ 伝説のエピソード 3

チェーンを切ってしまうほどのパワー

2010年のロンドでは華々しい優勝を飾ったカンチェラーラですが、その1年前、2009年のロンドでは大変悔しい思いをしています。ミュールと並ぶ名物の激坂 コッペンベルグ(Koppenberg)を走行中、なんとチェーンを切ってしまったのです。プロでも足をつく荒れた石畳の上り坂でカンチェラーラの高出力にチェーンが耐えきれなかったのか、路面の振動などの要因が重なって運悪く破断してしまったのか、どちらにしろプロのレースではめったにないトラブルでリタイアしてしまいました。

カンチェラーラ 伝説のエピソード 4

タイムトライアルでも余裕を持ってゴールする


TTレースといえば秒を争うシビアなレースです。そのためTTスペシャリストはしばしばクロノマンとも呼ばれ、ライダーはゴールラインに到達するまでコンマ1秒を縮めようと、最後までもがくのが一般的です。

しかしカンチェラーラは、2009年に地元スイスで開催された世界選手権 エリート男子TTにおいて、前走のグスタフ・ラーション(スウェーデン)らを追い抜き圧倒的な強さで優勝。この大会で銀メダルだったラーションを抜き、さらに1分以上の大差をつけ、ゴール時には100m手前から両手を挙げて歓声に応えていました。秒を争うはずのTTレースでそのようなパフォーマンスをする余裕を持ってゴールしたことが非常に印象的でした。

見ておくべき!カンチェラーラ伝説のレース 1

伝説のエピソードをふまえ、ここではカンチェラーラを知るうえで見ておくべきおすすめのレースを紹介します。

'10 ロンド・ファン・フラーンデレン

「キング・オブ・クラシック」の異名を持つ、ワンデイレースの頂点的な存在であるロンド。前述した、カンチェラーラが異次元の加速を見せたレースであり、彼の強さがはっきりわかるレースです。

登場する15カ所全てが勝負所とされる急勾配の坂、それら激坂の手前で起こる駆け引きと心理戦、「本当に強い選手しか勝負できない」と言われる難コースなど、ロンドには見せ場が多数あります。2010年のレースでは、カンチェラーラが異次元の加速を見せる247km地点(残り15km)のミュール・カペルミュールが見どころでしょう。

見ておくべき!カンチェラーラ伝説のレース 2

'10 パリ〜ルーベ

「クイーン・オブ・クラシック」もしくは「北の地獄(Hell of the North)」と呼ばれる、ロンドに並ぶ格式高いワンデイレース。パリ〜ルーベは他のロードレースと違って上りがほぼ無い真っ平らなコースですが、合計で50km以上設定されるパヴェ(石畳)区間があまりに荒れているために完走するのさえ困難と言われています。

パヴェではパンクや落車などに巻き込まれて遅れないよう先頭で入ることが絶対条件とされるため、その手前でゴールスプリントさながらの位置取り合戦が始まり、すさまじい迫力です。また、パヴェは星1つから星5つの間で難易度が決められていて、最難関の星5つのパヴェではレースが決まるアタックが起こりやすことから、それらがハイライトとなります。

しかし、2010年大会は違いました。カンチェラーラがパヴェでもなんでもない、210km地点(残り49km)の舗装路でアタックし、独走で逃げ切り勝利を決めてしまったからです。通常、ワンデイのレースで他チームから徹底的にマークされる絶対的な優勝候補が50kmもの距離を独走することはありません。しかし、カンチェラーラはやってのけてしまいました。その独走劇を是非見てみてください。

見ておくべき!カンチェラーラ伝説のレース 3

2012年から、ロンドでは名物区間ミュール・カペルミュールがコースから外され、その代わりにオウデ・クワレモント(Oude Kwaremont)とパテルベルグ(Paterberg)を終盤に3周回するコース設定に変更されています。
 

'13 ロンド・ファン・フラーンデレン

ここ数年続いていた「ボーネン VS カンチェラーラ」の対決に、力をつけてきた怪童ペーター・サガン(スロバキア)が割って入る構図となり、2012年優勝のボーネン VS 前哨戦のE3 ハレルベーグで優勝したカンチェラーラ VS 同じくヘント〜ウェベルヘムで優勝したサガンと開催前から注目を集めるレースとなりました。

しかし優勝候補ボーネンが早々に負傷リタイアとなったため、上位に食い込める可能性が高まった伏兵選手の動きが活発化し、カンチェラーラは必勝パターンの独走に持ち込めません。混乱の中、カンチェラーラは239km地点(残り17km) オウデ・クワレモントでサガンを引き連れてペースアップし、逃げていたルーランズ(ベルギー)を捉え、243km地点(残り13km) パテルベルグで渾身のアタック。そのレースを見ていた世界中全ての人々が「そこでアタックする」とわかっていたポイントでアタックし、スプリント能力で勝る怪童サガンとルーランズを突き放して優勝しました。

見ておくべき!カンチェラーラ伝説のレース 4

'09 世界選手権 エリート男子タイムトライアル

こちらも先に伝説のエピソードで触れたレースです。地元スイスで開催された世界選手権、エリート男子TTにはラーションの他にもマルティン(ドイツ)やロジャース(オーストラリア)、ウィギンス(イギリス)、ザブリスキー(アメリカ)など名だたるTTスペシャリストがエントリーしており、カンチェラーラと言えど決して楽な戦いではないと予想されていました。

しかし蓋を開けてみると、1分前にスタートした銀メダルのラーション、2分前にスタートした2014年TT世界チャンピオンのウィギンスと優勝候補を次々と追い抜いて圧勝。ゴール時にはペダリングを止め、ロードレースかのように両手を挙げてゴールするという余裕っぷりを見せます。厳しい上り区間を含むコースで平均速度は51.58km/hを記録しており、直線だけでなくコーナリングの速さも目立っていました。カンチェラーラがスタートした時点でコース上にはラーションとウィギンス、マルティンらが同時に走っているため、非常に緊迫した状況が楽しめるはずです。

カンチェラーラのトレーニング


カンチェラーラのインタビューや記事を見てみると、TTに特化したトレーニングこそしていたようですが、いわゆる「地獄のトレーニング」といったものは見つけることができませんでした。ただしインタビューなどの一端から、コンディション調整やメンタルトレーニングには気を使っていたことが想像できます。そのいくつかについて紹介します。

しっかりと準備する

レースの直前だけではなくそのずっと前から良質な食事を摂り、リラックスして、肉体的にも精神的にも準備を整えていくことが重要です。

目標を決める

トレーニングに対するモチベーションを維持するために、苦痛を乗り越えるために、自分をコントロールする術として目標を設定するべきです。目標達成のため自分のペースを把握し、トレーニングのレベルを段階的にステップアップさせていくこともそれらには必要なプロセスです。

マインドセットを整える

マインドセットとは自身を形成するものの見方や考え方のことで、信念、価値観、経験、思い込みによるバイアスなどに左右されるものです。それがポジティブになるよう癖づけることが大事なのです。

「苦痛は一瞬、思い出は永遠に」

ロードバイクのトレーニングは時にきつく、苦しく、やめたくなることもあるでしょう。しかし、このツイートのように視点を変えてみるのもいいかもしれません。そしてトレーニングしてきたことが結果としてあらわれた時には、それを自信にしましょう!

起きる

ベッドに横たわり何もしないことは、リカバリーするには最適かもしれませんが、トレーニングするときにはご褒美のことなどを考えてスイッチをオンにしましょう。

とは言うものの、トレーニングのしすぎ、レース前のウォーミングアップのしすぎはいいことではないとも付け加えています。

良い機材を使う

トレーニングの成果を発揮するためには、機材も良いものを準備する必要があります。それはレースに適したロードバイクだけではなく、ヘルメット・ホイール・スキンスーツなど包括的なことです。

カンチェラーラのペダリング

カンチェラーラのペダリングは特徴的です。一般的に良しとされているペダリングとは異なり、ロードバイク上で腰がグニャグニャ動いて8の字を描いているように見え、ペダリングの効率が悪そうな気がします。しかしそれは、ビッグパワーを生み出すペダリングのために腰とお尻、上半身を連動させ、ペダリングを最適化した結果そう見えているだけで、体幹がブレているわけではありません。

また、股関節を柔軟に使うために脚を単純に上下させてペダリングしているのではなく、膝が立体的な円を描くようにペダリングしていることも相まって、やたらとグニャグニャしているように見えるのだと考えられます。

背筋がピンと張ったようなフォームなのも長時間パワーを出すペダリングのためでしょう。ただし、フォームに関しては正しい正しくないといった概念はなく、どのようなペダリングをするかで変わってくるはずです。同じくTTを得意とするマルティンは、逆に背中をグッと丸めてペダリングをしています。

カンチェラーラの機材へのこだわり

プロチームのエース格にあたる選手となると、好みのパーツや個人スポンサーの関係で、ロードバイクにしばしばチームスポンサー外パーツを装着していたり、ウェアを身につけたりすることがあります。カンチェラーラも例外ではなく、彼のロードバイクにはこだわりが随所に見て取れます。

駆動系

最も目立つのが機械式(ワイヤー式)の変速セットを使用している点です。理由については、トラブルが起きた際に自力で対処するため、電動変速のフィーリングが好みではなかった、機械式の方が操作が楽しい、など諸説あります。また、スポンサー外のビッグプーリーを使っていた時期もありました。

操作系

ハンドルはサクソバンクに在籍していた一時期のみコンパクトタイプにしていましたが、そのとき以外は一貫してアナトミックタイプを使用しています。サドルに関しては薄く硬いものより多少クッションが入ったものが好みのようです。


ホイール

これは想像でしかありませんが、おそらくホイールはZIPPのものが好みだったのではないでしょうか。ロンドやパリ〜ルーベなど、パヴェでの振動対策として他選手が手組みのクラシカルなホイールにする中、カンチェラーラはZIPPのカーボンホイールをチョイスしていたこと、TTレースではトレック時代もZIPPのディスクホイールを使い続けていたことなどからそれを推測できます。

その他

カンチェラーラほどパワーのある選手となると、ロードバイクのフレームは剛性が高いものを選ばなければならないはずです。しかしインタビューなどで頻繁に快適性について言及しているため、剛性だけではなく快適さにもこだわっていたのではないかと考えられます。

機材にはこだわりを見せるカンチェラーラですが、アイウェア・シューズなどウェア関係ではスポンサーのものを使っていたようです。

カンチェラーラ 引退へ

カンチェラーラが2016年をもって引退することを発表したのがその前年。世界中が驚きと悲しみに包まれました。ところがカンチェラーラがラストレースに選んだのは、宇都宮で開催される「ジャパンカップクリテリウム」。日本のファンにとって、カンチェラーラの最後の勇姿を胸に刻めたことは最高の思い出となったのではないでしょうか。

引退発表しても勝利を積み上げる

2016年での引退を発表したカンチェラーラですが、春先のビッグレースであるストラーデ・ビアンケでいきなり優勝。そしてブラジルで開催されたオリンピック個人タイムトライアルでは金メダルと、引退年にビッグレースで5勝をあげ、有終の美を飾りました。ただし、本人は最大の目標としていたロンドではサガンに破れ2位、パリ〜ルーベでは落車して勝負に絡めなかったことが心残りだったようです。

ジャパンカップクリテリウムが引退レースに

母国スイスではなく、なぜ遠く離れた日本のレースを最後に選んだのか…。それは本人にしかわからないことですが、日本のファンの熱心なサポートに対する感謝は頻繁に口にしていました。もしかしたらそれをレース出場というかたちで表現してくれたのかもしれません。レースではカンチェラーラの徹底的なペースコントロールにより、チームメイトの別府選手が2連覇しています(これもすごいことです)。

引退後のプランは?

カンチェラーラは引退後もトレーニングを続けていて、トライアスロンを始めてみたり、ロードレースイベントを開催したりとロードバイクに対する情熱を失っているわけではありません。しかし、再び(マネージャーやコーチとして)プロロードレースに関わることは完全に否定しています。

現在はTREK(ロードバイク)やGORE Bike Wear(ウェア)、OMATA(サイコン)、IWC(時計)などの企業とプロジェクトを進めるビジネスマンとして活躍中です。さらにSt Gallen大学にてスポーツ管理課程を終了しており、将来的にはスポーツイベントを運営し、世界にロードバイクの楽しみを伝えたいとも語っています。

スイスの至宝「カンチェラーラ」特集! まとめ

いかがでしたでしょうか。ここまでカンチェラーラというプロロードレーサー、彼に関する伝説のエピソード、伝説のレースなどを紹介してきました。見る人を一瞬で虜にする強さ、ロードバイクに対する情熱、紳士的な振る舞いなど、カンチェラーラが引退後も人気な理由を垣間見ることができます。

これまでカンチェラーラを知らなかった方も、一度、彼の出場したレースを見てみてはいかがでしょうか。きっとカンチェラーラのファンになると思いますよ!

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