恵那山とは
長野県と岐阜県にまたがる山
恵那山は、長野県南西部の阿智村と、岐阜県南東部の中津川市にまたがっている山です。中央アルプス(木曽山脈)に所属している山としては、最南端に位置します。すぐ近くに中央自動車道や中央本線が通っているので、アクセスの面では支障が少ない山です。
恵那山の標高
恵那山の標高は2,191メートル。この高さは日本国内の山岳では、上位200以内に入っていません。しかし岐阜県の美濃国の最高峰、神にまつわる美しい単独峰であることから、日本百名山のひとつです。恵那山の存在感はかなり大きいようです。
恵那山の神話と名前
恵那山という一度聞けば忘れない名前の由来には、神様の意外な神話が関係しているって知っていましたか?
天照大神の降臨神話
江戸時代の尾張の儒学者、松平君山の「吉蘇志略(きそしりゃく)」によれば、かつて恵那山に天照大神が降臨し、天照大神の着ていた胞衣(えな)が埋められたと伝えられています。胞衣とは「へその緒」だとの話で、一体何を意味しているのか興味深い神話です。
恵那山の名前
恵那山という山の名も、天照大神の胞衣が元になっているとされています。神様のへその緒が山の名になるとは不思議過ぎます。美濃国の恵那山の西山麓の一帯は、現在でも恵那郡と呼ばれています。また、長野県の阿智村方面では、恵那山は野熊山と呼ばれてきました。
恵那山のアクセス
車でアクセス(長野側)
中央自動車道が恵那山の北側に通っています。長野県側では園原インターが最寄りで、県道477号で恵那山の東山麓にアクセスできます。
車でアクセス(岐阜側)
岐阜県側では、中央自動車道の中津川インターを降ります。国道19号と363号を経由して、恵那山の北側、西側、南側にアクセスできます。
電車とバスでアクセス(長野側)
JR飯田線の飯田駅前から、信南交通バス駒場線に乗って阿智村内に入ります。阿智村では村役場前などから、村内巡回バスに乗り換え、恵那山東側の青木屋前バス停などで下車します。特に広河原ルートに徒歩で向かうなら、このアクセスが必要になります。
電車とバスでアクセス(岐阜側)
JR中央本線の中津川駅および落合川駅が、恵那山の最寄りの駅です。中津川駅から北恵那バスが恵那山方面に出ています。恵那山ウェストン公園バス停が最寄りで、恵那神社前の宮前ルートは、徒歩でも訪れやすい登山道です。
恵那山の駐車場の場所
広河原登山口駐車場
東側の阿智村の広河原登山口前には、駐車場が整備されています。トイレ付きなので初心者でも安心できる駐車場ですが、ゲート前の「熊出没注意」の看板を見れば、背筋が凍りつくようです。
恵那神社専用駐車場
西側の宮前ルートから登る時には、恵那神社専用駐車場を利用します。ここはあくまでも恵那神社の駐車場ですが、日帰りならば問題なく利用可能です。恵那神社境内では、トイレの利用ができます。
黒井沢登山口駐車場
恵那山南方の、黒井沢からのコースで利用する駐車場です。恵那神社のあたりから黒井沢までは、車で10分ほどを要します。森林の中に10台以上は駐車できるスペースがあり、入り口のそばには仮設トイレも設置されています。
神坂峠無料駐車場
北東側で初心者にも人気の神坂峠コースでは、この駐車場を使います。中津川市方面からアクセスするなら、落合川駅方面から霧ケ原の坂道を上ってきます。阿智村方面からは、園原インターから県道477号の坂道を通ってアクセスします。駐車場から登山口までの距離は40メートルです。
恵那山の登山ルート①
広河原ルート
2001年に開設された、長野県阿智村側の新しい登山道です。恵那山登山道の中では、登山口から山頂までの距離が、もっとも短いコースです。難易度的にもそれほど高くないために、日帰り登山者や初心者を含めて多くの人がルートに挑んでいます。
ルート地図と所要時間
標高1,200メートルの広河原登山口駐車場を出発し、北へ向かって舗装道路を歩きます。登山口は駐車場から1.3キロ離れた場所です。登山道はS字を描くようなコースで西に向っています。往復距離は10キロで、所要時間は6時間程度です。急坂はあるも難易度は低く、初心者も日帰り可能です。
広河原ルートの見どころ
登山道の中間点にあたる、標高1,800メートル付近に、東方の南アルプス(明石山脈)を眺める絶景ポイントがあります。
恵那山の登山ルート②
前宮ルート
中津川市の恵那山西山麓に鎮座している、恵那神社前を始発点とします。神社南側に登山口があり、恵那神社の駐車場が使えます。明治の「日本登山の父」と讃えられたウォルター・ウェストンが開いた登山道を元にしている歴史的コースです。日帰りできますが、難易度は高めなコースになります。
ルート地図と所要時間
標高800メートルの恵那神社駐車場を出発して早々に、石がゴロゴロした対東沢の木橋を渡りますが、前日が雨天の場合は増水に注意です。徐々に急坂となりますが、尾根上の枯大桧や、中の小屋跡などを通過すれば徐々に平坦になります。
歩いていて「距離が長い」と感じてしまうのがこのコースが高難易度の理由です。往復距離はおよそ17キロ、往復の所要時間は8~9時間を要します。したがって初心者には向いておらず、中級者から登ってみたい登山道です。
宮前ルートの見どころ
中間地点の尾根の上に、枯大桧という名木が見られます。このヒノキは樹齢2000年以上とまで言われています。枯れてしまった今もなお、山の主のような堂々たる幹の太さを持っています。中の小屋跡がある標高1,700メートルあたりから、御嶽山や乗鞍岳が見えるようになります。
恵那山の登山ルート③
黒井沢ルート
恵那山の南方からの中難易度コースです。国道363号からウェストン公園の横を通って林道に入り、奥の登山口の駐車場まで移動します。登山道の途中では避難小屋があるので、疲れたときも雨のときも休憩のしやすさがあり、日帰りも十分可能なコースです。
ルート地図と所要時間
登山口から間もなく黒井沢避難小屋があり、休憩所にもなります。野熊ノ池は登山道の中間点の尾根上にある小さな池で、そばに避難小屋が建っています。七合目を過ぎれば視界が開け、水場があるなど休憩地点には困りません。往復で15キロ、所要時間は8時間~9時間ほどです。
黒井沢ルートの見どころ
野熊ノ池は透明度が高く、湖底の枯れ木や取り巻くクマザサが独特な風景を生み出しています。池の近くのテーブル・ベンチが、人気の休憩ポイントです。休憩所山頂に近い水場は、岩がゴロつく中でちょろちょろとした清らかな水が湧き出しています。
恵那山の登山ルート④
神坂峠ルート
全長12.6キロほどの、恵那山では短距離となる登山道が神坂峠ルート。神坂峠祭祀遺跡のある標高1,600メートル地点から出発します。初心者に負担が少ない距離感で、日帰りも実現できる難易度です。
ルート地図と所要時間
神坂峠の駐車場を出発すると、コース上では視界の開けている場所が多めです。大判山を過ぎるあたりから、他のコースには無いほどの急勾配で、上りのきつさは感じられます。しかし13キロもないほどの短距離であり、初心者でも無理過ぎることもありません。往復で7時間程度を要します。
神坂峠の見どころ
始発点となる神坂峠には、国の史跡に指定されている神坂峠祭祀遺跡があります。春には単なる草むらにしか見えませんが、古墳時代~中世にかけての祭祀跡が発見されています。途中の標高1,695メートルの大判山の山頂は、南アルプス方面の山々の景色が良い場所です。
恵那山の山頂からの眺望
恵那山の山頂は、岐阜を代表する絶景スポットです。どんな風景が待っているのか、どんな施設が置かれているかは事前に知りたいことです。
山頂の施設
恵那山の山頂は休憩場所になりますが、その時は水場付き、トイレ付きの避難小屋が役立ちます。山頂には恵那神社の奥宮が置かれ、奥宮本社のほか葛城社や富士社など、合計で7つの社が建ち並んで神域的な光景を見せています。
山頂の景色
山頂から北側を眺めれば、駒ケ岳を中心とした中央アルプスの標高3,000メートル級の山々が重なって見えます。東を見れば南アルプスで、北の鋸山から南の茶臼岳など主要な山々を一望できます。手前には伊那盆地の人里があり、山脈の背後では富士山もチラッと顔をのぞかせています。
恵那山の山小屋①
恵那山頂避難小屋
山頂部の標高2,170メートル地点に建っている、赤い屋根の避難小屋です。場所は山頂南部の、黒井沢ルート側です。初心者も日帰り登山者も含めて、恵那山登山者の誰もが1度は立ち寄ることになる避難小屋です。
恵那山頂避難小屋の設備
管理人はおらず、1年中利用ができます。宿泊できる部屋は、15人の収容能力があり、内部では布団が用意されています。水場、炊事場、トイレなど、生活できる一連の設備は全て用意されていて、住み着きたくなります。
恵那山の山小屋②
野熊ノ池避難小屋
南側の黒井沢ルート上で利用できる避難小屋です。標高1,720メートルの野熊ノ池のそばの森林の中に建っています。見た目は丸太を使ったログハウスで、まだ新しさを残しています。
野熊ノ池避難小屋の設備
1部屋のみのシンプルな避難小屋で、炊事場やトイレなどは付いていないので、あまり期待はできません。雨風をしのいだり、ちょっと休憩や食事をしたりといった利用法ができます。
恵那山の山小屋③
富士見台高原 萬岳荘
日本一の星空とも讃えられる神坂峠の、大型の山小屋兼キャンプ場です。神坂峠の標高1,590メートル地点に位置し、神坂峠ルートの始発点から北へ500メートル先です。施設の利用は4月から11月までですが、年間を通じて管理人常駐でキャンプ初心者にも優しく、冬季は避難室が利用できます。
萬岳荘の設備
長大なウッドデッキや廊下、それに連なる三角屋根が魅力的です。萬岳荘の宿泊施設は客室も避難室も、キャンプサイトも全て有料の予約制です。屋内には調理場やシャワー室、屋外にもBBQグリルやコンロを完備しています。食材は提供されないので、持ち込みの必要があります。
恵那山周辺の名所①
恵那神社
恵那山域では第一の神社が、山の西山麓に鎮座する恵那神社です。その昔は恵那山全体を御神体として天照大神を祀っていましたが、現在はイザナギとイザナギの2柱を祭神としています。宮前登山コースの登山口が目の前なので、参拝してから登山道に乗り出してみませんか。
恵那神社の見どころ
境内は立派な杉林に囲まれ、仄暗い中で狛犬を従えた社殿が厳かな様子を見せてくれます。社殿前の夫婦杉は御神木でありつつ県の天然記念物で、夫杉は幹周り6.29mで高さ47m。婦杉が幹周り5.48mで高さ46メートルという巨大さで、訪問者を圧倒します。
恵那山周辺の名所②
月川温泉郷パークランド
花桃の郷として知られる阿智村の月川温泉郷で、自然に溶け込む複合的なレジャースポットを探しているなら、パークランドです。恵那山の広河原の登山口に向かう道添いにあるので、帰りにでもふらっと立ち寄ってみたくなります。
月川温泉郷パークランドの見どころ
料理は地元で取れた、イワナやアマゴなど川魚、バーベキューなどの食事をお目当てにできます。川ではニジマスのつかみ取りも難易度を感じさせず、ゴルフ初心者も簡単なマレットゴルフや、日帰りキャンプまで楽しむことも。心をつかみ取りされてしまうスポットです。
恵那山周辺の名所③
恵那山ウェストン公園
恵那神社のそばに、ウェストン公園という名所があります。明治時代にやってきて、「日本の登山の父」とまで尊敬を集めたイギリス人の宣教師で登山家、ウォルター・ウェストンを顕彰する目的で、2011年に完成した公園です。
恵那山ウェストン公園の見どころ
ウェストンの胸像のそばには中津川の清流が流れ、暑い季節になると大人も子供も川に入って、遊んだり涼んだりしています。公園の向かいには女郎の滝を見ることもできます。5月11日はウェストン祭りが開かれ、バーベキューや音楽演奏などで盛り上がります。
恵那山周辺の名所④
恵那山のお水取り
難易度の高い登山帰りに、天然の美味しいお水をお土産にしたいなら、恵那山のお水取りをおすすめします。恵那神社西側の国道363号のそばに、「天下の名水」と銘打たれたお水取り場があります。以前は無料でしたが、近年は車1台500円、バイク1台200円で、お水が取り放題です。
恵那山のお水取りの設備
現地では株式会社ミネラルジャパンが運営しています。敷地内に立てられている水道管から、恵那山から湧く水がジョボジョボと流れ出ているので、その水を水タンクやボトルに詰めるだけです。ちょっとした休憩所としても利用できます。
恵那山周辺の名所⑤
中津川温泉 クアリゾート湯舟沢
恵那山の日帰り登山で、どっと出た疲れを癒やすとなれば、日帰り利用可能な温泉、クアリゾート湯舟沢です。中央自動車道神坂PAの近くにあるクアリゾート湯舟沢は、プールも温泉もグルメも宿泊も、全部欲張れる中津川市の名所です。
クアリゾート湯舟沢の設備
屋内プールはウォータースライダーもあり、夏は屋外流水プールが可動します。温泉は水着着用で入れる13種のバーデと、露天の美人の湯を用意。レストラン神坂茶寮は地元野菜を使った料理を提供、マッサージやカラオケもできます。子供の遊び場も用意されているので、日帰り利用もおすすめです。
恵那山に行こう
天照大神から始まり、ウォルター・ウェストンも魅了した恵那山。初心者登山にもエキスパートにも相応しい、ぴったりな難易度のコースが選べる山なことがわかりました。恵那山周辺の名所探訪と一緒に、恵那山登山をしてみませんか。
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