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ホンダ「VFR400R(NC30)」特集!名車レプリカのスペックとインプレとは?

時はバブル時代、小排気量車が一世を風靡していた頃、VFR400R(nc30)というバイクがホンダよりラインナップされていました。400ccながら当時のホンダのテクノロジーをギュッと凝縮させたこのVFR400R(nc30)のヒミツを紐解いていきましょう。
2020年8月27日
松山 優輝
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VFR400R(nc30)とは?

「4ストのホンダ」の技術の結晶

1988年、いわゆるバブルと呼ばれる時代の真っただ中、同じようにバイクもバブルともいえる時代がその頃でした。高性能のレーサーレプリカバイクがどんどん各メーカーからラインナップしていた時代に、ホンダからお得意の4ストエンジンを使ってのレーサーレプリカが開発されました。その名もVFR400R。名称はその型式「nc30」で呼ばれ、随所にみられるこのバイクならではの個性が数多くのライダーを魅了しました。

伝説のバイク「RC30」のレプリカ

このタイプのバイクはいわゆる「レーサーレプリカ」と呼ばれるジャンルのバイクですが、例に漏れずその「nc30」にもレプリカの元となったバイクがあります。それは「rc30」と呼ばれる当時の市販車レース「スーパーバイク選手権」のホモロゲーションモデルとなったバイクがが元なのです。このバイクは当時の価格で148万円という当時の市販車最高額というびっくりプライスのバイクでした。そのレプリカの「nc30」は、レプリカとはいえその再現度の高さに定評がありました。

VFR400R(nc30)の「V4エンジン」とは?

400cc唯一のV4エンジン!

ホンダはV4エンジンが得意なメーカで、古くからそのエンジンを開発してきました。数あるバイクの中でも最も排気量の小さいV4エンジンがこのnc30に搭載されたエンジンです。「V4エンジン」は、V型二気筒エンジンを二つ左右に並べて4気筒とするレイアウトのエンジンで、4気筒ながら二気筒並みの幅と、クランクの異相角の設定によるトラクション特性の変化、そして4気筒のような高回転型のパワー特性が特徴です。

その構造とは??

出典: https://www.pinterest.jp/pin/362047257525531453/

クランクシャフトのピンを共有した二本のコンロッドで前後シリンダーのピストンをつないでいます。それを左右で二本の計四本で4気筒としています。シリンダーヘッドにはバルブ、プラグが4本、そしてnc30はこのシリンダー角は90°、クランクの異相角はそれまでのホンダのV4エンジンが180°クランクを採用していましたところ、nc30は360°を採用しています。この360°クランクの異相角は、不当感覚爆発によるトラクション特性に優れており、レーサーにはもってこいのクランク角です。

その他の特徴

V4エンジンはその構造上部品点数が多くなってしまい、その分コストもかかります。そして複雑な機構なので整備性が犠牲になってしまいます。ちょっとした部品の交換作業でもかなりの手間がかかってしまったりするような傾向があるようで、例えばプラグの交換作業でもフロント側のシリンダーのプラグはラジエターが邪魔をしていたりとたとえほかのバイクならすぐに済むプラグの交換作業でもV4エンジンだと知恵の輪を解くような交換作業になってしまいます。

VFR400R(nc30)の「プロアーム」とは?

ホイール交換が楽になります。

nc45の車体を見ていると、一番目を引くポイントはリアの足回りのビジュアルではないかと思います。「プロアーム」と呼ばれる一昔前のホンダや、現在ではイタリアのドゥカティが採用していますこの特殊な足回りは、ホイールを回転させるハブがスイングアーム側にくっついており、ホイールの交換が容易にできます。なのでコンマ一秒を争うレースの世界ではピットインでの交換作業も速さが求められるため、当時のホンダはレーサーのRVF750に採用しました。

ホイール交換以外のメリット、デメリット

とは言いつつもこのプロアームという機構、あまりメリットが目立ちません。ホイール交換が楽なこと以外で言えば、その見た目のビジュアルのカッコ良さに尽きると思います。バイクの美しさにも定評があるイタリアのドゥカティも、積極的にこのプロアームを採用しています。逆にデメリットは片持ちである以上左右で構造が違うため、車体の左右で剛性感が微妙に違ったり、スイングアームを両持ち式に比べて頑丈に作らないといけないために足周りが重くなってしまう点などがあります。

VFR400R(nc30)のこだわり(エンジン編)

代名詞となるV4エンジン

「VFR」の由来は、V four エンジンから来ています。つまり、名前からすでにエンジンをウリにしていることがうかがえます。そんなnc30のエンジンは、400ccの車体に収まるようコンパクトに設計するための色々なノウハウが詰まっており、小排気量車ともいえども一切の妥協がない様な作りになっています。クランクの異相角はそれまでのホンダのV4エンジンは180°で設定されていたものを360°に設定、他の4気筒バイクとは異なる独特な排気音もこのバイクの特徴です。

スペックに表れない細かい仕様


このnc30は規制値一杯のハイスペックもさることながら、数値に表れい細かい仕様も目を引くポイントです。クラッチはエンジンブレーキ、減速時のショックを緩和するバックトルクリミッターを採用、ヘッドのカムシャフトはギアでクランク側から動力を取り出すカムギア方式を採用。ヘッドにはダイレクト・ロッカーアーム方式という構造を採用、この構造はヘッドをコンパクトにするのに一役買っています。

実は量産車初採用のスパークプラグ

出典: http://www.wemoto.com/bikes/honda/vfr_400_r3k_nc30_japan/89-90/picture/spark_plug_ngk/

実はこのnc30のスパークプラグ、量産車初採用となる小径スパークプラグが搭載されています。このプラグは、なんとその直径が8mmという小ささです。これはプラグが小さい分バルブ系を大きく設計することが出来、その分エンジンの吸排気の効率が上がります。V4エンジンの特徴のトルク感、そして高回転での加速力のアップに一役買っています。

VFR400R(nc30)のこだわり(車体編)

極太フレームにこだわりのプロアーム

nc30のフレームはその断面が「目」の字の形のフレームを採用しており、これもホンダ独自のフレーム構造です。400ccクラスのバイクには持て余すような高剛性を手に入れています。さらにリアのプロアームも高剛性な作りになっており、その構造上ホイールの交換も容易な作りになっています。さらにそのプロアームを魅せるためにエキゾーストを車体の右側に取回すあたりもホンダのこだわりがうかがえます。

高性能なショックユニット

nc30はサーキット、ワインディングを爽快に走れるようショックユニットも当時のホンダの技術の粋を集めたモノになっています。フロントフォークには減衰力の調整が可能な41Φフロントフォークを採用、リアショックには プロリンク、リアサスペンションと呼ばれるこれもホンダ独自の機構が採用されています。リアのショックユニットも減衰調整が可能なものであり、どんなシチュエーションのライディングにもしっかり車体をセッティングできるようになっています。

VFR400R(nc30)のエンジンスペック

レーサーレプリカさながらのスペック

nc30の代名詞のエンジンは、水冷4ストロークDOHCV型4気筒399ccです。その馬力は規制値一杯の59ps、リミッターをカットすれば最高速は215km/hほど出るそうです。最大トルクも4.0kg/mと、こちらもほかのライバル400ccレプリカと比べると若干高めの数値が出ています。小径プラグのもたらす恩恵と言えるでしょう。燃費は一般道で18L/km、高速ツーリングなどになると24L/km程になります。

V4エンジンの出力特性

V4エンジンは、一般的な並列四気筒のエンジンに比べると、その出力特性はフラットで、並列四気筒エンジンのような高回転になればなるほど加速感が増していくような感じのフィーリングとは少し違います。その代わり並列4気筒に比べて低回転からトルクフルに加速します。ゆえにV4エンジンはこのようなレーサーレプリカバイクのようなバイクのほかにツアラーのような旅バイクに採用されることも多いです。

VFR400R(nc30)の車体スペック

車体もやはりレーサーレプリカ!

レプリカとはいえやはりレーサーの端くれ、このnc30も高スペックなエンジンに見合う車体を有しています。そのサイズは全長1.985m、全幅0.705mh、全高1.705と、実際に筆者もその目で実物を見たことがありますが物凄くコンパクトにまとまっています。ホイールベースは1.345mと、こちらもかなりのショートホイールベースで、旋回性を高めるための攻めの数値と言えます。因みにこのホイールベースの数値は一般的な400ccネイキッドバイクで1.400mを超えてくるくらいの数値なので、いかにそのホイールべ―スが短いかをうかがうことが出来ます。

その他車体スペック

その他の数値を見てみましょう。車体重量は乾燥で164kgとアルミフレームの恩得でしょうか?やはり400ccの枠で考えますとかなり車体は軽めです。これはかの有名なヤマハの単気筒バイク「SR400」と同じくらいの数値で、エンジンだけならその倍以上の馬力が出ています。シート高はこの時期のバイクらしく若干低めの0.755m。峠で膝スリコーナリングをしやすい低めの数値です。タイヤサイズはフロント120/60 R17 リア150/60 R18とリアだけは18インチのホイールを採用しています。

VFR400R(nc30)のポジションインプレ

ここからは試乗経験のある筆者の独自のインプレも含めてまとめていこうと思います。


攻めすぎず楽すぎず...

跨ってみた時のインプレは、「意外と楽」というものでした。この時期のレーサーレプリカバイクもそれぞれバイクによって結構ポジションにもきつかったり楽だったりと違いが出てくるようですが、そこはやはりホンダ、ライダーにフレンドリーなバイクを作っていました。足つきも細めな車体も相まって身長174cmの筆者の身長であれば両足はぴったりと地面に接地します。ハンドルの高さは現行のスーパースポーツのポジションに慣れている人であれば違和感なく乗れる程だと思います。

違和感は意外なところから

タンクの幅もV4エンジンを有するnc30は車体の細さとバランスのとれた細さになっています。日本人の小柄な体であれば自然と二―グリップが決まるでしょう。そして車体の重量は軽いので、取り回しにもあまり苦労はしないと思います。ですがやはりセパハン、乗りなれていないライダーであればセパハンはそれだけでも違和感の塊です。そしてV4エンジンは熱のこもりやすいエンジンなのでその車体のアルミフレームはかなりの熱を帯びます。跨った際に足に当たることは必至なので、生地の厚いウェアでないと跨っておくだけでも一苦労です。

VFR400R(nc30)の走行インプレ

走り出してみると...

小径プラグのもたらす設計による恩恵でしょうか、低速トルクは太く、走り出しはレプリカの中でも爽快です。そこから走り出すと、並列4気筒ほどのパワーの盛り上がりはありませんが、回せば回すにつれてどんどん加速していきます。インプレでもエンジンのパワーに関しては不満なインプレは一切見られません。高速巡航でもレプリカはフェアリングがライダーを守ってくれますので、この辺りを評価するインプレも多数みられます。

V4ならではのエンジンフィール

そのエンジンのフィーリングは、並列4気筒エンジンとは違う独特のものです。360°クランクによるトラクション性能の良さなのか、地面をけって進む感覚が強く伝わってきます。エンジン音も、カムギアトレイン特有のモーターのような音がするのと、並列4気筒比べるとボロボロと何やら無骨な印象を受けるエキゾーストノートです。このあたりのインプレッションはライダーによって評価が分かれるようです。

VFR400R(nc30)スポーツ走行インプレ

スポーツ走行を想定したクロスミッション

nc30のミッションは、クロスミッションを呼ばれるギア比が特別なミッションを搭載しており、その特徴はパワーバンドを維持しやすいようなギアのつながり方をします(シフトアップしても回転数があまり落ちない)。そして一速はレブリミットまで引っ張れば100km/hまでスピードが出てしまいます。パワーの出方は比較的フラットなのですが、やはり回転数を高めに維持しないときびきびした走りは出来ないので、必然的にパワーバンドを外さずギアを選んでいくような走り方が要求されます。

コーナリングは好評価なインプレ多数!

コーナリングのインプレは「扱いやすい!」や「安定感のあるコーナリング!」といったようなものが目立ちます。ホンダのバイクは最初からフロントに強く荷重がかかっており、セルフステアが強く作用しますのでバイクのライディングが上手でなくてもフロントにしっかり荷重が乗ります。なのでライダーの簡単なアクションスパッとバイクがコーナーを曲がってくれるようになっています。

VFR400R(nc30)のライバルは?

その昔、バイクのレースが盛んだった時期にSP400というクラスがあり、それは400ccのバイクだけで行われるレースでした。その中でVFRのライバルであったバイクを紹介します。

ホンダのライバルはやはりヤマハ!FZR400RR

FZR400RRとはこの時期にヤマハがラインナップしていた400ccレプリカです。お得意のジェネシスエンジンや純正でFCRというレーシングキャブレターを装着した明らかにレースを意識したマシンでした。ヤマハらしいコーナリング哲学に基づいて設計されたバランスのいいバイクだったようです。レースの方でも好成績を残しました。

SP400最強マシンのカワサキ ZXR400

ZXR400はカワサキが開発したレーサーレプリカです。パワー至上主義のカワサキらしいバイクに仕上がっており、そのスペックはエンジンの耐久性を犠牲にしたという程馬力が出たエンジンであり、当時のSP400では常に上位を独占したようなレーサーでした。nc30にとっては非常に手ごわいライバルとなったバイクと言えたでしょう。

VFR400R(nc30)の後継機、「RVF400R」とは?

ホンダ最後のV4レプリカ!


レプリカブームが過ぎ去ろうとしていた頃に、ホンダがワークスレーサーのバイクの名前をそのまま冠した「RVF400」というバイクを開発しました。ホイール交換を容易にするプロアームや小径プラグ、360°クランクなどのVFRならではの装備はそのままで細かい仕様変更やフレームも新設計とし、馬力は規制の強化から若干落とされたもののまぎれもなくホンダの400ccV4エンジンバイクの週第正ともいえる完成度でした。

スペックをちょっとだけ紹介!

この時期は馬力規制の強化がされた時期なので、RVFの最高出力はその規制値一杯の53psという数値まで落とされました。ですが乗っていると馬力を落とされたようなフィーリングはあまり感じられず走れるようです。最大トルクは3.7kgとこちらも規制強化を受けてか若干のダウン、車体のスペックの方は数値で見るとあまり変化はありませんが、フレームが一新されていたりリアホイールが18から17インチに変更されていたりと仕様の変更は随所に見られます。

そもそも「レーサーレプリカ」とは何?

憧れのバイクの公道走行モデル!

バイク人口が一番多かったといわれるこのころは、地上波でもバイクのレースの中継を見ることが出来ました。そのテレビの中では往年の有名なライダーたちが過酷なレースを繰り広げ、テレビの前の人たちを熱狂させていた時代でした。そんなテレビの中のライダーたちの駆ったマシンこそがいわゆるレーサーレプリカの大本ともいえるマシンであり、ライダーにとっては憧れのマシンだったのです。レーサーレプリカとは、その憧れが形を成したものだったともいえます。

nc30は何のレプリカ??

そしてもちろんこのnc30にもレプリカではない大本となるバイクがあります。後述で説明しますが当時のスーパーバイク主権のホモロゲーションを取るための「rc30」というバイクがそれです。ですがそのrc30ですら大本言えるバイクがあり、それがHRC製のワークスマシン「RVF750」だったのです。この三台の見ても、360°クランクやプロアームなどそのスタイルはほとんど変化がありません。レプリカとはいえその再現度は恐るべしです。

ホモロゲーションモデル「rc30」についても紹介!

SBKレースのホモロゲーションモデル

各メーカーが専用のマシンを開発し競ったWGP(現MOTO GP)とは別にスーパーバイク選手権という市販車をベースとしたマシンで戦うレースがありました。そのレースに出場できる市販車についてはいろいろルール(ホモロゲーション)が設けられており、その一つに「一定の台数を販売した市販車でなければならない。」というものがありました。そのルールを満たすために1000台限定で市場におくりこまれたそれがホモロゲーションモデルの「RC30」です。

市販車の枠を超えたびっくりスペック

そのスペックは750ccながら130ps、最大トルク7.1kgというようなハイパワーで、乾燥車重は180kgと400ccクラス並みの車重という流石ホモロゲーションモデルともいえるスペックでした。nc30でおなじみのホイール交換が容易になるプロアームや360°クランクはそのままに、コンロッド、バルブはチタンに、ホイールや一部エンジンカバーはマグネシウム、フェアリングはFRPと、高価な素材をこれでもかという程につぎ込んだプレミアムなバイクになりました。価格もびっくり148万円で、当時の市販車一のプライスでした。

VFR400R(nc30)のまとめ!

全盛期の時代ならではの豪華バイク

現在の小排気量車は、厳しい環境規制やコストダウンという制約に縛られながら少しでも馬力を稼ごうと必死になっているのが現状です。ですが当時はお金が回ったバブル全盛期、小排気量車でさえ今ではありえないスペックやコストがかかったバイクが多数製造されていました。そんな中で生まれたnc30もいまや主要部品は廃版なパーツも多く、その維持も難しいのが現状です。ですが、そんな中でも大切にnc30を維持されているオーナーも多数いらっしゃいます。いいモノというのは、時代を超えて愛されるものとこのnc30は教えてくれるようですね。