超音波カッターはおすすめ!
超音波カッターを使っての第一声、「ナニコレ!」とクセになること間違いなしです。切れ味抜群、しかも、切り口がきれい。プラモデルの加工などで使われている方もいるでしょう。しかし、金属ではどうですか。普段は「高周波高速グラインダー」を使ってる方におすすめです。使い方も簡単です。しかも使用中の音も静かで、切り屑もほとんどありません。これを使わない手はありません。
超音波カッターの原理
「切れ味抜群!」の超音波カッター、その原理は、「刃物に超音波を与え、切断効果を向上させる」とされています。刃先を振動させることで、普段カッターナイフで切断している物を、より軽い力で切る事ができます。
高周波超音波カッターともよばれる超音波カッター、その構成は「振動子」と「(高周波)発振器」からなります。振動子には圧電素子が組み込まれていて、電圧が加わると振動するのです。発振器は周期的に電圧を振動子に送っています。その高速振動(高周波振動)が刃に伝わり切断しています。
超音波と高周波は違う?
超音波と高周波は本質的に違います。高周波は電波(電磁波)に分類されます。また、低周波に対して高周波という比較表現になります。高周波は、テレビやラジオ、携帯電話などの通信に使用される周波数の広域帯のことになります。高周波としての使用例は、電気治療などで使われる、「高周波治療器」ですね。 一方、超音波は音波に分類されます。音波は、「物体が振動した際に、物体の周囲のものに伝わる波動」と定義されています。音波の振動の速さによって、音波を「音」として感じる事ができます。一般に、30Hz以下の音波を「低周波」、20kHz以上の高周波域を超音波とよんでいます。
超音波カッターはさまざま
超音波カッター用途は?
こんなに便利な超音波カッター、どんなところで使われているのでしょうか。 ・ホビー(模型)業界:プラモデル、レジンキャスト、アクリル、塩ビ、ペットボトル等の切断 ・電気電子業界:基板のパターン切断、シリコン、粘土の切断 ・繊維業界:布生地の切断 ・包装業界:シート、フィルム、紙、段ボールなどの切断 ・食品業界:パン、寿司、ケーキ、サンドイッチ、アイスクリームなどの切断 ・医療業界:石膏の切断、マウスピースなどの切削 など、幅広い分野で使われています。
超音波カッターで切れないものはある?
なんでも切れると言いながらも、カッターナイフやデザインナイフでの切断と比較して、軽い力で切断しているのです。主役は「刃」です。刃で切れないものは超音波の力でも切ることはできません。一般には、金属やカーボンは切れない、なんて言われています。 ここでは、金属やカーボンの切断に挑戦した機種を紹介しています。最後まで読みすすめていただくと、超音波カッターに対する印象が変わるかもしれませんよ。
超音波カッターを選ぶ
超音波カッターの使い方が分かったら、次はどう選びましょうか。
業務用かホビー用か
超音波カッターを製作しているメーカーは各種あります。ホビー用としては、本多電子というメーカーが有名ですね。ホビー用の使い方は業務用と比較しても、手軽に操作できるようになっています。業務用の特徴は、比較的高出力で自動機に組み込んで大量生産を行えるなど、メーカーによる特徴もさまざまです。
スイッチは2タイプ
手元スイッチかフットスイッチかも気になるところですね。手元スイッチの場合はON/OFFの操作も同時に行うことが求められます。フットスイッチの場合は、足で踏んで操作するので、より集中して切断物を取り扱える利点があります。
超音波カッターの価格帯を比較
購入に際して価格も気になるところです。ホビー用では安いものでは3万円代で購入できます。もちろん、10万円超えの高価なモデルもあります。違いは連続運転時間や、安全装置や切断能力によります。安いからダメということは決してありません。まずは安いモデルから超音波カッターを体験し、物足りなくなったら、いろいろなモデルを比較してみてください。 さすがに業務用の価格は分かりませんが、安いモデルでも10万円超えのようで、高価なものになると100万超えもあるようです。
超音波カッター用途別おすすめ ホビー用1
USW-334 (本多電子)
ホビー用を代表するロングセラーモデルになります。比較的購入しやすいお安い価格となっています。 電源は家庭で使える100Vです。手元スイッチなので知らない間に動いていて怪我をした、なんてこともありません。使い方も簡単です。電源をつないで、手元スイッチを押す。これだけで簡単に切れてしまいます。余分な力を入れることなく、気持ちよく切ることができます。
超音波カッター用途別おすすめ ホビー用2
ZO-40B (本多電子)
こちらも本多電子のモデルになります。模型専用機と銘打ってリリースされてます。 電源は100Vで、手元スイッチタイプです。こちらもお安い価格で販売されています。 模型の加工を得意としているので、樹脂切断時の溶けを軽減させています。レジンを切る時の煙の発生にも配慮がなされています。安全性にも工夫がされていて、力を加え過ぎると超音波停止機構が採用されています。また、細かいことですが、ケーブルをストレートタイプとしているので、不意なテンションがかかることなく作業に集中できます。
超音波カッター用途別おすすめ ホビー用3
ZO-80 (本多電子)
またまた本多電子のモデルになりますが、こちらはさらなる進化を遂げています。「スーパーハイモード」を採用し、ホビー用超音波カッターとしては、最高の切れ味を実現しています。メーカーとしても「業務用超音波カッターと比較しても負けない切れ味」を自負しています。 電源は100−240Vに対応しており、手元スイッチタイプとなっています。
スーパーハイモードを採用
スーパーハイモードのおかげで、「レジンキャストを大まかにザクザク切ったり」、「自動車のテールライトの加工でカラワリ」などもできるようになりました。もちろん従来のノーマルモード、ハイモードへの切替もできます。そして、安全への配慮も忘れていません。ハンドピース内部に温度センサーを搭載していますので、過負荷による異常を監視できます。また、全てのモードが連続10分の運転で自動OFFとしていますので、安心して使用できると思います。
オプションでフットスイッチが追加されていますので、使い方も広がるでしょう。安い買い物ではありませんが、けっして損はさせない性能です。
超音波カッター用途別おすすめ ホビー用4
KW-430C (TGK)
次のおすすめは、小型ハンディータイプです。TGKというメーカーです。 電源は100Vで、フットスイッチタイプとなります。 使い方は同じです。電源を入れてフットスイッチを押すだけ、あとは切ることに集中してください。ペン感覚で操作できるので、直線、曲線と思いのままに、スピーディーでスムーズな作業が行えます。本体も2.5kgと軽いので、場所を選ばずどこでも活躍できることでしょう。 こちらも安い価格ではありませんが、試す価値ありです。
超音波カッター用途別おすすめ ホビー用5
SUW-30CT (スズキ)
スズキからも超音波カッターが製作されています。ホビー用として取り上げましたが、そのパワーは業務用として十分な働きをしてくれます。 電源は100Vで、フットスイッチタイプになります。 プラスチックはもちろん、電子回路基板から、自動車のバンパー樹脂の切断からくり抜き等の加工まで幅広く対応できる能力があります。フットスイッチを採用しているので、少々大きな対象物でもしっかりホールドして作業できます。こちらも安い価格ではありませんが、これじゃないと、という用途もあるのではないでしょうか。
超音波カッター用途別おすすめ 精密部品向け1
UC500LS (ピーエムティー)
こちらのメーカーは、ピーエムティーといい、ご覧のデスクトップ型の超音波カッターとなっています。精密部品、とりわけ、リチウムイオンバッテリーへの加工が可能な機種です。使い方としては、単体で使用できる「スタンドアローン」型と、設備の一部として「装置に組み込む」ことでオートメーションに一役買っています。これまでは大型プレスで切断していたものを、超音波技術を用いることで低荷重で行うことができるようです。
超音波カッター用途別おすすめ 精密部品向け2
SC1000LS (ピーエムティー)
こちらも同じピーエムティーというメーカーからになります。用途は同じ、精密部品関係になります。「スタンドアローン」は開発時に少量での試し切りに、「装置組み込み」時には大量生産を行う段階で採用する、といった使い方をされているようです。 ホビー用と比較すると、使い方や対象物も番う世界かもしれませんが、超音波カッターの可能性を知るにはちょうどよいのでないでしょうか。
超音波カッター用途別おすすめ 食品向け1
超音波カッターで食品が切れるって知ってましたか。たしかに柔らかく変形しやすいので、刃で押したり引いたりして切るよりは、超音波でキレイに切れると嬉しいですね。
サーベルタイプ W2005-30CT
日本アビオニクスというメーカーのカッターです。こちらはサーベルタイプと呼ばれ、包丁でカットするような使い方です。 電源は100Vなので、ご家庭でも使えます。 繊細な超音波振動が、摩擦抵抗を小さくし、食材を型崩れさせることなくキレイにカットします。切断時の切り屑もでないので、片付けもお手軽になるでしょう。
ブレードタイプ
同じメーカーからのブレードタイプです。装置へ組み込み自動化することで、連続的にたくさんの処理を行えます。店舗や工場で効率的に作業がおこなえます。ケーキ、メレンゲ、チーズなど柔らかいものでも型崩れすることがないので、商品を無駄にすることなく生産性向上に貢献します。
超音波カッター用途別おすすめ ガラス向け
USC-50-39K (クマクラ)
このモデルはいかにも業務用、という佇まいをしています。「高剛性超音波カッター装置」として、ラインアップされています。専用の高剛性超音波ユニットの先端に、カッター刃を取り付けることで切断を行います。本体に剛性を持たせることで、ガラスや金属の切断ができます。 電源は100Vで、リモコンで操作が可能となっています。 半導体や電子機器のプリント基板などの加工に有効で、装置への組み込みで使い方が広がります。
超音波カッター用途別 番外編1 カーボン
さて、カーボンを切断できるのはどんな装置でしょう。
SF-0102+HP-2200 (ソノテック)
ソノテックというの超音波加工機の専門メーカーです。カーボンプリプレグに特化したモデルとしてラインアップされています。カーボンプレプリグとは、カーボンクロスに樹脂を染み込ませたカーボンシートのことです。メーカーの推奨によればこの装置の組み合わせを使用すると、10mm厚までのカーボンプレプリグまで切断できるようです。もちろん、カーボン専用ではなく、プラスチック、ゴム、布などにも対応しています。切れ味だって問題なしです。
カーボンを試し切り
シート状のカーボンですが、切れました。頼もしいですね。
超音波カッター用途別 番外編2 金属
ZO-41 ハイパワーモード (本多電子)
本多電子のOZ-41です。金属専用というわけではなく、ホビー用です。新たに搭載されたハイパワーモードの切れ味を試すため、実験的に金属を切ってみた、という事があったのでここで紹介させていただきます。 電源は100−240Vで、手元スイッチタイプになります。
新機能の追加
・TAF回路を搭載 切断時の刃が振動すると摩擦熱が発生します。このTAF回路は、切断する物に合わせて、パワーを自動調整してくれるので、摩擦熱による切断面の溶けを抑える事がでました。 ・ボタンを押し続けなくてよい 手元スイッチの場合、その操作に気を取られてしまうかもしれません。そこで、一度押すと超音波振動が始まります。もう一度押すと運転が止まるという機能を追加しています。 ・振動子保護の温度センサーを搭載 ハイパワーモード使用時の振動熱による破損を防ぐため、ハンドピース内温度が上昇すると停止するように保護センサーを搭載しています。
金属を試し切り
さて、このハイパワーモードで金属が切れるかを、銅線で試してみました。
ご覧の通り切れました。素晴らしいハイパワーモードでしたね。ただし、ハイパワーモードは5分程度でオーバーヒートしますのでご注意ください。 この機種も比較的安い価格で販売されていますので、ぜひお試しください。
超音波カッターを正しく使うために
保護メガネをつかって
超音波カッターは、刃の振動をうまく伝える事が切れ味を左右します。そのためにも、刃が確実に固定されているかを確認しましょう。また、刃が固定されていないと、切断中に本体から刃が外れて大変なことになります。保護メガネを忘れずに使用しましょう
見落としがちなカッターマット
意外と見落としがちなのが、カッターマットです。「素晴らしい切れ味」の超音波カッターですので、勢いあまって、下のカッターマットまで切った、ということもよくあります。超音波カッター専用のマットも販売されていますので、ご一緒にお使いください。
摩擦熱にも気をつけて
1秒間に何万回もの振動を刃に与え、切断したい物と刃との間に摩擦熱を生じさせます。その摩擦熱で切断物を溶かしながら切っているともいえます。化学繊維のような物の場合は切りながら断面を溶かすという利点があります。しかし、紙の場合はこの摩擦熱が断面を焦がしてしまう事があります。樹脂の場合ですと、切断面が溶けて、再び付いてしまうこともあります。切断物と刃の形状、切断スピード、超音波のパワーのバランスにも注意が必要です。
刃は消耗品です
刃は、唯一切断物と接触しているところです。しかも1秒間に数万回も振動しています。過酷な状況で使われているので、摩耗・損傷は切れ味を左右します。刃が汚れたり、変形していないかをこまめに確認しながら安全に使用してください。いつもと作業性が違う、切れ味が悪い、と感じたら刃を交換してみることをおすすめします。刃だけでなく刃固定具も交換部品としてありますので定期的に交換しましょう。
まとめ
いろいろな業界での使用例とともに超音波カッターを見てきました。プラモデル作りや手作り工作など自作が好きな方には受け入れられ、そうでない方には、まだ使い道がぼんやりとしていますでしょうか。今回は業務用にも注目して超音波カッターの世界を紹介させていただきました。その気になれば、金属だって、カーボンだって切れちゃう超音波カッター、これを読んで何かを閃いたのではないでしょうか。さすがに業務用を購入するのは厳しいですが、ホビー用は使い方も簡単で、安いモデルもありますので、超音波カッターの切れ味をご体感ください。