すずらん(鈴蘭)とは
科名・学名
ユリ科の多年草である「すずらん(鈴蘭)」は、学名を「Convallaria majalis」といいます。「Convallaria」は、「convallis(谷)」と「 leirion (ユリ)」を意味する言葉が由来だとされています。日本では、「君影草」や「谷間の姫ユリ」などが主なすずらんの別名です。
品種
すずらんの種類は、多種多様です。その中でも北海道を中心に日本の北側に生息するすずらんは、日本の原産品種です。この品種は、葉よりの下に花をつけるのが特徴です。 ドイツすずらんは、日本原産の品種より葉の幅が広くはと同じ位置に花を付けます。丈夫で育てやすいのが特徴で、香りが良いので香水の原料にも良く使われます。 その他にもピンクの花をつけるピンクすずらんや高さがあり大きな花をたくさん咲かせるドリーン、葉の黄い縦じまが特徴的なアルボストリアータなどすずらんの種類は豊富です。
すずらんの特徴と見頃の季節
見頃の季節
開花の季節は、4月~6月で見頃は5月が最適です。すずらんのメッカともいえる北海道では、1カ月ほど見頃の時期がずれ6月頃が見頃になります。
花の特徴
一般的に知られているすずらんの花色は、白が多いです。白以外にもピンクなどの品種が存在します。すずらんの花は、可憐で清楚なイメージです。茎に鈴なりになる花の姿は、今にも涼しげな音を立てるベルのように見えます。この姿が和名である「鈴蘭」の由来です。
香り
すずらんの香りは、ローズやジャスミンと並ぶ三大フローラルとして知られています。香水の原料としても使われるほど、香しい香りを楽しませてくれます。園芸用でよく使われるドイツすずらんは、香りも強く丈夫なので育てやすいといえるでしょう。
毒性に注意
可憐な姿に反してすずらんには、高い毒性があります。すずらんには、花や茎、根にいたるまで全体的に毒性があります。特に花と根に多く含まれているのが特徴です。 間違って摂取した場合、おう吐やめまい、頭痛などを起こします。ひどい場合には、心不全や心臓まひなどを起こす危険があるので気をつけておきましょう。
特に北海道では、食用にされている「ギョウジャニンニク」(上の写真)とすずらんが良く似ているため中毒を起こす人もいるほどです。 また、すずらんを生けていた水にも有毒物質が含まれているので、小さい子供などが誤飲しないように気をつけておきましょう。
すずらんの花言葉
花言葉いろいろ
すずらんの花言葉には、次の意味があります。 ・再び幸せが訪れる ・純粋 ・純潔 ・謙遜
花言葉の由来
「再び幸せが訪れる」というすずらんの花言葉は、春の訪れを心待ちにする北国の人々の思いに由来します。春を告げるすずらんは、長い冬に閉ざされていた北国の人々にとって「再び幸せが訪れる」ことの知らせだといえるでしょう。 「純粋」や「純潔」などは、聖母マリアの花として欧州で古くから伝わることに由来します。
すずらんの育て方
植え付けにおすすめの季節
すずらんは、鉢植えにも地植えにもできる植物です。植え付けに適している時期は、10月~12月上旬か4月~5月上旬になります。 鉢植えは、苗より少し大きめの鉢に用土を入れ苗を植え付けます。土は水はけのよいものを選ぶのがポイントです。根が不揃いな時は、植え付けの前に長い値を切りそろえておくとよいでしょう。芽の先が少し見えるくらいに土をかけ、植え付け後はしっかりと水を与えることが大切です。 すずらんは暑さに弱いので地植えの場合は、直射日光を避け木陰などに植えるとよいでしょう。庭土には腐葉土や肥料を混ぜ込みんでおきます。植え付け後は、鉢植えと同じようにたっぷりと水を与えてやりましょう。
すずらんに適した土質
すずらんを植える際に利用する土は、水はけがよく通気性の良い弱酸性の土質がおすすめです。地植えをするなら、掘り返した土に堆肥や培養土を混ぜておきます。鉢植えには、草花用の培養土を使うのがおすすめです。
水やりのポイント
すずらんは、乾燥が苦手です。鉢植えなどの場合、夏場はすぐ乾燥してしまうので土表面が乾ききる前にこまめに水をやりましょう。冬場は、さほど水やりをする必要はありません。ただし、乾燥させないよう常に湿りけを持たせることが大切です。 地植えの場合、湿りけの多い場所に植えてあれば水やりをさほど気にする必要はありません。土表面が乾燥しているなと思ったら、充分に水を与える程度で大丈夫です。
肥料と与える時期
すずらんの花を翌年も楽しむためには、芽のつく地下茎を育てる必要があります。そのためには、花の咲き終わる5月~6月頃に肥料を与える適期です。鉢植え・地植えともに液肥や緩効性化成肥料を与えてやるとよいでしょう。 植え付け時の元肥は、有機質の肥料を用います。9月~10月に植え付ける際は、花芽を育てるためにもリンの多い肥料がおすすめです。
すずらんの植え替えや増やし方
植え替え
すずらんの植え替えは、株にダメージを与えないためにも休眠期におこなうのがおすすめです。時期は、4月~5月か10月~12月頃が良いでしょう。 鉢植えの植え替えは、1~2年をめどにおこないます。地植えは、3~5年おきで大丈夫です。鉢植えを株分けせずに植え替える場合は、少し大きいかなと思うくらいの鉢を選ぶとよいでしょう。
株分け
すずらんは、株分けで増やすことができます。すずらんの株分けは、10月~11月頃が適期です。3月の休眠期でもおこなうことができます。すずらんをそのままにしておくと、4年~5年で地下茎が込み合って来るので適度に株分けをおこないましょう。 株分けの際には、花芽を折らないよう注意しながら、地下茎を花芽が5個程度残るくらいに切り分けます。花芽と葉目の見分け方のポイントは、花芽はふっくらと丸みをおびており葉芽は少し小振りで尖っているのが特徴です。
すずらん観賞のおすすめスポット&季節
日本一の群生地スポット
日本で野生のすずらんを楽しむなら、北海道沙流郡平取町にある「芽生(めむ)すずらん群生地」がおすすめです。15haといわれるその壮大なスケール感は、流石日本一の貫録があります。こちらの開花季節も夏になる少し前ぐらいですが、本州より時期が若干遅く6月頃のようです。
本州のおすすめスポット
本州ですずらんの群生を見るなら山梨県笛吹市芦川町にあるすずらんの群生地がおすすめです。2.6ヘクタールの敷地には約260万本ものニホンすずらんが咲き乱れ、その姿に圧倒されるでしょう。こちらは5月が見頃で、5月下旬に「すずらん里祭り」というイベントもおこなわれています。
すずらんの悲しい伝説
すずらんは白色が良く知られていますが、ピンク色のものもあります。特にピンク色のすずらんは北海道で見かけられる品種です。そんなピンクのすずらんに因んだちょっと悲しいアイヌ伝説があります。
酋長の娘カパペラは、村の若者キロロンアンと恋に落ちます。狩人として名を知られたキロロンアンは、ある日森で襲われ死んでしまいます。その死を悼み、カぺパラはキロロンアンが手にしていた小刀で喉を切りキロロンアンの後を追ったのです。 その血は大地に広がり、そばに咲いていたすずらんにも飛び散ります。それ以来その付近には、ピンクのすずらんが咲くようになったと伝えられています。
まとめ
白い可憐な花を咲かせるすずらんは、見ているものを涼やかな感じにさせます。今にも軽やかな音をたてそうなそのベル型の小さな花が、何とも可愛らしいです。開花時期には、鉢植えでお部屋に飾っておくのも素敵です。地植えにして、涼やかな風景を楽しむのもいいでしょう。 ただし、すずらんには毒性があるので小さいお子様などが触れないよう気をつけておきましょう。また、花粉にも毒性があるとされるので、食卓などには飾らないことです。