はじめに
キャンプの歴史
キャンプは明治時代、西洋から輸入された多くのもののひとつとして日本に紹介され、当初は団体行動を通じて心身を鍛錬するための教育活動として推進されました。スカウトキャンプと言われるこのキャンプスタイルはその後、ボーイスカウトやガールスカウト運動につながって現在に至りますが、今日のレジャーキャンプはこのスカウトキャンプから派生したものです。キャンプをするためにキャンプする層が出現・増加したことで、気軽に楽しめるレジャーキャンプは大きなブームを形成するようになりました。
登山の歴史
一方、レジャー登山の興りも明治時代と言われています。古来日本では、山は神仏が住む神聖な場所と考えられてきたため、山登りは信仰のためのものでした。富士山をはじめとして国内のほとんどの山は、白衣をまとった行者（山伏）によって開山されてきた歴史があり、年間の登山者数が世界一である高尾山も、もともとは修験者が修行のために登る霊山でした。明治時代以降、国が少しずつ豊かになるにつれて、信仰と無関係の近代登山が始まり、アウトドアがブームになってくると、気軽なレジャー登山が主流になってきました。
キャンプ・登山系の漫画について
今やすっかりキャンプや登山が大衆化し、老若男女を問わず受け入れられるようになりました。最近では、このキャンプ・登山ブームの影響で、その面白さ、知識、情報を伝える漫画がずいぶん増えました。気軽に自然に触れるまったりキャンプ漫画から、本格登山漫画、野外料理にスポットを当てた漫画など、その種類は様々です。中には人気に火がついて、アニメ化されたものも。今回はそれらの数多くの作品の中でも、初心者におすすめできる漫画を10点ご紹介します。（タイトル横の巻数は、2019年4月1日時点の情報です）
山登りにおすすめの漫画：その1
山登りはじめました（巻数2）
日本人に産まれたら誰もが一度は登頂を夢見る山、富士山。その富士山を目指し、著者である鈴木ともこさんが、山登りをはじめるところから富士登山までの歴史を描くエッセイ漫画です。富士山はもちろん、気軽に登れる高尾山や尾瀬など、誰もが知っている馴染みの山々の情報が豊富であることに加え、写真が多く掲載されているのもポイントです。
山歩きの注意点などの役立つ情報も！
山や山道具の紹介にとどまらず、山歩きの注意点などの役立つ知識も満載です。いきなり富士山と聞くと身構えてしまいそうになりますが、著者は小学校時代は体育「２」、中学校時代は1ｋｍ走って腹痛。仕事はインドアとのこと。標高599メートルの高尾山から、3,776メートルの富士山へ...皆さんもこの漫画を手に取り、勇気をもって日本最高峰を目指してみてください。富士山は登ったという方は、屋久島編の2巻もおすすめです。
山登りにおすすめの漫画：その2
ヤマノススメ（巻数17）
アニメ化もされている、山初心者の女子学生たちが登山に挑戦する漫画です。高所恐怖症でインドア派のあおいは、山登りが大好きな幼馴染のひなたと再会し、山に誘われます。初めはあまり気の進まないあおいでしたが、山に入るうちに少しずつその魅力に惹かれていき…あおいの世界が山を通してどんどん広がっていくさまが描かれています。
かわいらしいキャラクターが活躍！
この漫画のおすすめポイントのひとつは、ひと昔前なら決して山で見かけることがなかった、かわいい女の子が主人公であること。もちろん、山や登山道具の情報も充実しているため、初心者が山登りのいろはを学ぶ上で役立つ知識が満載の作品です。アニメの方が気軽でいいという人は、アニメから入ってもいいかも。サードシーズンまで放送されています。
キャンプにおすすめの漫画：その1
キャンプ、できちゃいました（巻数１）
言わずと知れた女子キャンプの火付け役、こいしゆうかさんが、自身の体験をもとに描くエッセイキャンプ漫画です。紹介されているのは、荷物の少ないコンパクトなキャンプ。最低限必要なキャンプ道具の選び方から、テントの立て方、火のおこし方、キャンプ飯や、おすすめキャンプ場などなど、初心者が気になる情報が丁寧に、まんべんなく盛り込まれています。
女子だけでなく、男子にも、ファミリーにも！
内容は女子目線ではあるものの、あなたがキャンプ初心者であれば、男子にも、気軽にキャンプを楽しみたいファミリー層にも、万人におすすめできる漫画です。とりあえずキャンプをやってみたいけど、何をどうすればいいのかわからないという人は、まずこの作品を読んでみてください。自分にもできる！と思えるはず。
キャンプにおすすめの漫画：その2
ゆるキャン△（巻数7）
こちらもアニメ化されている作品。キャンプを楽しむ女子高校生が主人公の漫画です。道に迷ったなでしこは、富士山でひとりキャンプをしていたリンに助けられたことをきっかけに、キャンプの虜になっていきます。テントの選び方、設置の仕方、寝袋の良しあし、火の起こし方など、キャンプに必要な道具やその選び方、使い方などの情報が盛りだくさんな漫画です。
ゆるいキャンプを楽しみたい人は必読！
この漫画の魅力は、楽しみながらやキャンプの知識を身につけることができることもさることながら、一番はやはり、登場人物たちが織りなすゆるーいキャンプです。景色のいいところにテントを張って、湯を沸かし、まったりとカップラーメンをすする…そんなタイトル通りの気軽なキャンプを楽しみたい方は必見の作品です。ちなみにアニメはセカンドシーズンの放映と映画化が決定。今から楽しみです！
山やキャンプ料理におすすめの漫画：その1
山と食欲と私（巻数9）
27歳女性会社員が主人公の、こだわり山料理が堪能できる漫画です。主人公の鮎美は、単独行での登山を好む言わば山ガール。会社の休み時間や休日も全てを山につぎこみ、オールシーズン・低山から3000メートル級の山まで独りで登ってしまう実力の持ち主。そんな彼女の山行の特徴は、料理にとことんこだわるということ。マンガに登場する料理の旨そうなことといったら...。次の登山で試してみたくなること間違いなしです。
とにかく料理が気になる方は、レシピ本も！
この漫画に登場する料理をまとめた"『山と食欲と私』公式 日々野鮎美の山ごはんレシピ"という作品もちゃっかり発売されています。山行中はいつもチョコやゼリーしか食べない、という人にこそ読んでほしい作品。山のみならず、キャンプでも、下界で作ってもおいしい情報が溢れている漫画、是非お召し上がりください。
山やキャンプ料理におすすめの漫画：その2
山賊ダイアリー（巻数7）
現役猟師が描く、狩り&料理をテーマにした異色の漫画です。主人公は作者の岡本健太郎氏。さながら原始人のように生きるために狩り、狩ったものを食す、実体験に基づくダイアリーとなっています。カラスや鳩といった、普段我々が食材としてみていないものを、いかに食べるか。猟師のリアルを垣間見ることができます。
サバイバル知識も学べます！
「買って食う」のが普通の99%の一般人にとっては、「狩って喰う」猟師の世界は、まったく縁がないように感じられるかもしれません。しかし、スーパーに並んでいる、加工された肉や魚を食べている我々が、日々命をいただくことで生かされているということを強烈に教えてくれます。また、山で遭難したときの対処法などのサバイバル知識を学ぶこともできる漫画です。
山人を知りたい人におすすめの漫画：その1
岳（巻数18）
言わずと知れた山岳漫画の金字塔ともいうべき、岳。山岳救助がメインテーマの漫画です。映画化もされているので、ご存知の方も多いと思います。物語の舞台は北アルプス。山岳救助ボランティアとして働く主人公の島崎三歩は、テントやかまくらを拠点に山中で生活を続けながら、山で起こる数々の遭難事故に立ち向かっていきます。下界で暮らしているだけでは分からない、山の生活の日常が描かれています。
大自然の懐に入るための心構えを教えてくれる！
この作品を読むと、山はとても楽しいところであると同時に、危険を内包していることに気づかされます。自然の中に身を置くということは、それはいつも隣りにある、ということを気付かせてくれる漫画です。軽い気持ちのアウトドア、ちょっとしたキャンプであっても、大自然への敬意と畏怖を忘れず、いつでもしっかり準備して、余裕をもって楽しむ姿勢を忘れないでいたいものです。
山人を知りたい人におすすめの漫画：その2
孤高の人（巻数17）
山小説の書き手でおなじみ、新田次郎原作の作品「孤高の人」を原案とした漫画で、先に紹介した岳と双璧をなす骨太登山ものです。主人公の文太郎はクラスメートにけしかけられて校舎の壁を攀じ登ったことをきっかけに、孤独なクライマーへと転身し、危険を顧みずに難しい壁に次々と挑んでいく様子が描かれています。
意志に満ちた男の生き様を括目せよ！
この文太郎は、実在の登山家である加藤文太郎氏がモデル。既に大衆登山がブームを形成しつつあった大正、昭和の時代に単独行を貫いた男です。孤高な人間の不器用さ、純粋さ、どこまでも突き抜けていく、意志に満ちた悲しい男の生き様を見てほしい。純粋なフィクションではありませんが、岳で登場する島崎三歩とはまた違った山男の魅力を感じることができる作品です。
続きが気になるおすすめの漫画：その1
山を渡る -三多摩大岳部録-（巻数１）
登山経験なしの女子大学生3人が、三多摩大学の伝統ある山岳部に新入部員として入部し、ガチンコな先輩たちと対立を繰り広げながら山登りをする漫画です。様々な娯楽が跋扈する現代、いかにも「今どきの若者」を象徴している3人娘に対し、山の酸いも甘いも、岩壁や雪と氷の世界をも知り尽くした山屋たちとの対照的な描写がおもしろい漫画です。
これから山に登りたい若者におすすめ！
山登り初心者の方は、是非3人娘に自分を重ねて、今後の展開を追っていってみてください。一方、リアルな山の情報もたっぷり。ガチの山の住人である先輩たちの言動は、読んでいて思わずクスリとなります。まだ1巻しか発売されていませんが、果たして三多摩大学山岳部は存続できるか、それとも廃部か...続きがとても気になる作品です。
続きが気になるおすすめの漫画：その2
ふたりソロキャンプ（巻数1）
ひとり孤独なキャンプを愛する34歳のおっさんに、20歳のこじらせ女子が無理やり弟子入りし、ふたりでソロキャンプ（もはやソロキャンプではない？）をするという、これまでにないキャンプ漫画です。設定は現実離れしていますが、ビギナーに対してキャンプのいろはをレクチャーしながら話が展開していくので、キャンプ初心者には読んでいるだけで多くの知識を学ぶことができる漫画です。
ふたりの今後の関係に期待大！
この漫画の最大の魅力はやはり、巌（おっさん）と雫（女子）が今後どのような関係をつくっていくのか、というところにあります。独りの時間を愛するおっさんは、はじめは雫を厄介者として扱っていましたが、1巻ではその気持ちが少しずつ変わっていく様子が描かれています。まだまだストーリーは始まったばかり...今後の展開に期待です！
おわりに
おすすめのキャンプ・アウトドア漫画（アニメ）はいかがでしたか。1冊でも気になる作品を見つけていただけたら、これほど嬉しいことはありません。アウトドアの楽しみ方は人それぞれ。高い山も低い山もどちらも楽しい。豪勢なキャンプもいいけれど、道具を絞ったサバイバルなキャンプもイイ。天気が良ければ嬉しいけれど、テントで停滞する1日がずっと忘れられない思い出になったりもする...是非、ご紹介した漫画やアニメを通して、ご自身にあったキャンプ・アウトドアスタイルを探してみてください！
その他の漫画が気になる方はこちらもチェック！
もっと漫画を読んでみたいという方は、こちらの2つの記事もおすすめ。登山漫画を読みたい人向けにまとめられた記事と、釣り漫画を読みたい人向けにまとめられた記事です。アウトドア系の漫画のおいしいところは、ストーリーを楽しめるだけでなく、気軽に情報を集め、知識を増やすことができる点にありますね。是非、いろいろな漫画を参考にしてみてください！
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