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キスリングのザックってどうなの?懐かしの登山ザックの特徴や評判を解説!

登山用品として欠かせないザックの中でも、今回はキスリング型の物についてご紹介していきます。かつては大学山岳部やワンダーフォーゲルでもよくつかわれたキスリング型ザックの評判を見ていきましょう。登山に興味があって、そのための道具を探すときには参考にしてください。
更新: 2024年1月28日
水城たんぽぽ
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そもそもキスリングって何?

昭和の登山ブームで愛用された大型ザック

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キスリング型のザックというのは、戦後の登山ブームから昭和の終わりごろまで特に愛用されていた大型の登山用ザックの事です。主荷室の左右に大型サイズのポケットがついており、横長のシルエットが特徴的なんですよ。キスリング型は横幅が広く、駅の改札をカニ歩きでしか通れなかった事や、背後から見たシルエットがカニのように見えたことからキスリングのザックを背負っている若者を「カニ族」なんて呼び方もしたそうです。

特徴は素材の帆布とその構造

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キスリングは全体の素材に綿の帆布を用いており、ベルト類には皮革が使われていたことが特徴です。綿帆布は防水加工されているので、荷物が濡れる心配がないというメリットがあったようですね。またもう一つの特徴として、フレームやクッションが一切使われていなかった事が挙げられるでしょう。こちらはキスリングのデメリットとして挙げられることが多いのですが、この構造の関係上荷物をパッキングすることでしか形を整えることができず、上手にパッキングするには慣れを必要としたようです。

キスリング・ザックの歴史は?

昭和の始まりから使用されていた歴史あるザック

キスリング・ザックの始まりは昭和4年にさかのぼり、スイスのヨハネス・ヒューク・キスリング氏が考案したザックを元にして片桐盛之助という方が製造したとされています。テレビや映画などにも一時期はよく登場しており、堤真一さん主演のドラマ「クライマーズ・ハイ」や高倉健さん主演の「南極物語」などでその姿を見ることができますよ。かなり古くから存在し、歴史の深いキスリング・ザックですが、販売されていた期間は意外と長く、1993年6月辺りまではキスリングの販売広告が存在していたと確認されています。

癖があるからこそ愛用された

昭和60年代には現在の縦長ザックが主流になり、少数派となってしまったものの姿を消すことは無く、歴史と伝統のある山岳部などでは愛用され続けたキスリングのザック。癖の強いザックだったからこそ、熟練者にはむしろ愛用されていたようです。登山においてザックに荷物を詰めていくことを「パッキング」と呼ぶのですが、キスリングはパッキングに慣れが必須で、パッキングが下手だとザックの重さが通常の倍にも感じられたそうです。慣れた登山者にはキスリングの形だけで相手が経験者か初心者か見抜けたとのことで、一種の「熟練度チェッカー」として評判だったんだとか。

キスリング・ザックを使うメリット その1

防水性の高さ

先ほども述べましたが、キスリング・ザックの素材には綿帆布を使用しており、防水加工がしっかりしているので多少の雨程度では中の荷物が濡れることはありません。本来なら綿素材は撥水剤をコーティングしても効果が薄いのですが、パラフィン加工と呼ばれる手法によって撥水性を保っています。帆布という名前の通り船の帆や馬車の幌にも使われるような加工なので、とても丈夫なのもポイントですよ。登山をするなら雨対策はしっかりしている方が嬉しいですよね。


キスリング・ザックを使うメリット その2

荷物の安定性

横長のキスリングは、現在主流となっている縦長の物に比べて重心が低い位置にあり、パッキングさえ上手にできれば荷物がしっかり安定するんです。流行していた時代に愛用していた人からは特にこの安定性が評判だったようですね。とはいえその安定性のために広くなった横幅が多少不便だったそうなので、便利なだけではなかったようです。

キスリング・ザックを使うメリット その3

年配の方の注目の的?

元々昭和の登山グッズであるということもあって、キスリングのザックを知っているのはほとんどがご年配の方です。中には今でも現役で登山を続けている方も多く、そういった方がこのザックを見かけると、懐かしさから声をかけてくれることでしょう。登山を通じて知らない人とのコミュニティーを新しく築きたい人や、ちょっとした話題作りがしたい人にはおすすめと言えるでしょう。

キスリング・ザックを使うメリット その4

サイズの大きさによる収納性

歴史だったり愛称だったりをいくら挙げても、結局のところ登山に使うザックが重視されるのはその容量や収納性でしょう。キスリングのザックが特に優れているのもこのポイントです。サイズに複数種類のものがありますが、小さいものでも幅50㎝に深さ65㎝ほど、特大サイズともなれば幅76㎝、深さは84㎝とのこと。正確な容量は不明ですが、実際に使用していた人からの評判によれば90リッターはあるはずということでした。

キスリング・ザックを使うデメリット その1

サイズの大きさによる問題

先ほども軽く触れましたが、キスリングの特徴でもある大型サイズで横長の形状は、大容量というメリットと同時に「歩きにくい・狭い所を通りにくい」といったデメリットにもつながっています。流行していた当時は特に駅の改札などで引っ掛かり、ザック愛用者はかなりの苦労をしたのだとか。身長にもよりますが、自動改札などは背伸びをした状態でなければ普通に通る事ができなかったそうです。混雑する場所や狭い所を通る場合の使用には向きません。

キスリング・ザックを使うデメリット その2

重さによる肩への負担が大きい


昭和初期の歴史あるザックと言えば聞こえはいいですが、現代の物と比較すればどうしても機能性などに難があるのも事実。肩ベルトやウエストベルトに関しては特にそのデメリットが目立ちます。皮革製ということで丈夫さについては文句なしなのですが、肩ベルト部分にクッション性が皆無のため荷物の重さによっては背負っているとすぐに肩が痛くなることもあるそうです。ウエストベルトに至ってはそもそも付いていないものが殆どで、これも肩に荷物の重さが集中する理由ですね。

キスリング・ザックを使うデメリット その3

素材である帆布の手入れは必須

素材に使われている綿帆布と皮革はとても丈夫で、その点においては登山用のザックとして最適なのですが、いかんせんその手入れの手間と重要性から決して扱いやすい素材ではなかったようです。防水処理や保革油によるメンテナンスは欠かせず、ちょっとでも気を抜くとぼろぼろになったり素材がダメになったりするなど、流行当時はこの帆布の扱いに苦労させられた人も多いそうですよ。定期メンテナンスだけでなく、雨に降られた後に放置しているとすぐにカビが発生するなど、かなり気難しい素材だそうですね。

キスリング・ザックを使うデメリット その4

パッキングの難易度が高い

こちらも先ほど軽く述べましたが、やはりどうしてもパッキングの難易度が高い事が特に目立ちます。ザックの上の部分目一杯まで荷物が詰めれるのは便利ですが、それも熟練の技があっての事。縦型ザックに慣れた現代人ではおそらくまともに荷物を詰めるだけでも四苦八苦するのではないでしょうか。どうしても使う際は、慣れないうちはサイドポケットのほうを頻繁に活用することになりそうですね。

総合的に見たキスリング・ザックの評判とは

メリットよりもデメリットが目立つ

全体的な性能や、ネット上に残る評判などを総合してみると、残念ながらキスリングのザックは現代において使用を推奨されるものではありません。大容量・丈夫さなど現在でも通用するような良い所ももちろんあるのですが、技術の発達した現代のザックに慣れているとその不便さやデメリットにどうしても意識が向きがちになることでしょう。歴史あるザックなのは事実ですが、実用性の点で語るのであれば他のザックを使用するべきと言わざるを得ません。

不便を楽しめるマニア向け?

手入れが面倒・重さが気になる・サイズのせいで扱いづらいと難点づくめではありますが、慣れるまで使い込めば決して実用性皆無というわけでもありませんので、どうしても購入したいという意思があるのなら買ってみるのも一つの選択肢でしょう。あえて現代のザックと比べて重さや不便さを実感し、歴史の違いを楽しめるような本物のマニアであるならばむしろオススメできるかもしれませんね。

キスリング・ザックで上手にパッキングするコツ

ポイントは底幅を意識すること


もしキスリングのザックを使ってみたいと考えている方がいるならまず習得しなければいけないのがパッキングの手順ですね。実際に調べてみるとネット上にもキスリングの評判や歴史を解説するとともに、パッキングのちょっとしたコツなども載っているので調べてみるといいかもしれません。コツとしては、荷物を横に張りながら、常に底幅と同じ幅を維持しつつ上まで積み上げていくこと、だそうですよ。例えどんなに荷物を積み上げたとしても、背負った際にキスリングと自身の背中の間に隙間を作らないように注意しましょう。

大容量の時は背カンを活用

大容量の場合には、前述の注意点やコツに加えて背カンを上手く使っていく必要があります。背カン、という名前だと聞き覚えがない方も多いかと思いますが、よくランドセルなどにも使われているベルト固定用の金具の事ですね。荷物を詰めた後、口部分の紐を絞ってからこの背カンに通し、力いっぱい引っ張りましょう。その後、背カンを通った口紐を前面にあるDカンにも通します。もう一度強く引っ張ってから、最後にもう一度背カンのほうに紐を通して結べば大容量でもしっかりとパッキングできますよ。

現在、キスリング・ザックを手に入れるには?

販売しているサイトは完全受注制

ここまで紹介してきたキスリングですが、現在でも実は販売されているようですよ。日本で初めてキスリング型のリュックサックを製造したという、これもまた歴史ある登山用品メーカー「片桐」の販売サイトを確認すると、ちゃんと商品一覧にキスリング型ザックの存在が確認できました。販売について、片桐の製品は現在全て受注をしてからの制作となっており、納品までには少し時間がかかるそうなので購入する際には注意しましょう。サイズも複数から選べるようになっているので、購入を考えている場合は一度販売元のサイトを確認しておきましょうね。

キスリング・ザック使用者からの評判もチェック

懐かしい。17才で奥多摩デビューから、ずっと使っていました。キスリングはパッキング勝負。そのお陰様で、パッキングは今風のリュックになろうとも、身軽さ、コンパクトさは、絶大なる継承を表しています。

実際に使っていた人の口コミの中で肯定的なものは、やはりその懐かしさなどに触れるものが多い印象です。熟練の登山者にとっては、自身の登山に関わってきた歴史を思い返す象徴のようなものになっているのかもしれません。実用的な面では、パッキングの難しいキスリングを長く使っていたからこそ、当時のパッキング技術が今でも活かせているという方も少なくない様子でした。重さやサイズなど、調べてみるとデメリットも多く目立つザックなのですが、実際の使用者からは良い評判が多く聞けるのもキスリングの特徴かもしれませんね。

まとめ

決して優秀とも高性能とも言えないはずのキスリング・ザックですが、使い込めばその良さに気付く人や、懐かしい思い出の象徴として大事にしている人もまだまだ多いものです。決して登山初心者におすすめできるようなものではありませんが、ある程度経験を積んだ人であればその重さや扱いにくさをむしろ愛おしく思えるかもしれません。気になった人は是非とも販売サイトを覗いてみてください。