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食虫植物『ハエトリソウ』とは?その生態と育て方!増やし方はどうするの?

ハエトリソウは、食虫植物といえばハエトリソウというくらいメジャーな植物ですが、育て方や増やし方など、よく知らない方も多いのではないでしょうか?近年食虫植物の人気も高まっています。ハエトリソウの育て方や増やし方などをご紹介します。
2020年8月27日
『カメレオン』
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人気の食虫植物ハエトリソウ

ハエトリソウの基本情報

科名:モウセンゴケ科

学名:Dionaea muscipula

形態:落葉性多年草

開花期:5月~7月

原産地:北アメリカ

食虫植物とは?

ハエトリソウは、ハエトリグサとも呼ばれ、食虫植物に分類されます。食虫植物とは、虫や小さな生き物を捕え、消化吸収し、養分とすることのできる植物のことです。ここで注意しなければいけないのは、養分は虫や小さな生き物に限らないということです。基本的には光合成により自らエネルギーを生み出し、成長することができます。虫を与えなければ枯れてしまうということはありません。

食虫植物の種類

食虫植物は、虫のとらえ方によって4タイプに分けられます。タイプによって育てる際の注意点も異なりますので、自分が育てる食虫植物がどのようなタイプに該当するのか、よく確認しておきましょう。

落とし穴式

有名なウツボカズラやサラセニアなど、壺のような形状の葉の中に、消化液や水を溜め、そこで虫を溶かして吸収します。消化液を分泌せずに水を溜めて、分解はその水の中の微生物に頼るものもいます。

粘着式

モウセンゴケ、ムシトリスミレなどがこのタイプで、茎の先端や葉などから粘着液を分泌し、そこにくっついた虫を吸収します。

はさみわな式

二枚貝のような葉で獲物を挟み込んで消化していくタイプで、ハエトリソウはこれに該当します。

袋わな式

V水中で袋状の捕虫嚢(ほちゅうのう)という器官で虫を捕えます。捕虫嚢は押しつぶしたスポイトのように周囲より水圧が低くなっており、入口のセンサーに獲物がふれると、ふたが開いて水と一緒に獲物を吸い込みます。タヌキモの仲間がこのタイプになります。

食虫植物としてのハエトリソウ

ハエトリソウははさみわな式の食虫植物ですが、他の食虫植物と同様に、光合成によりエネルギーを作り出して成長できるので、特別虫を与える必要はありません。自ら餌をとるために何か活動することはなく、勝手に挟まった虫などを消化することができるという程度に思っておいてください。

ハエを捕るメカニズム

ハエトリソウは、二枚貝のように開いた葉の内側に、3対6本の感覚毛というセンサーが付いています。30秒の間に何かが2回このセンサーに触れると、瞬時に葉が閉じます。ハエトリソウにとって葉を閉じるということは、とても多くのエネルギーを消費するため、間違って閉じてしまわないように、30秒の間にセンサー2回タッチというスイッチにしたと言われています。ひとつの捕虫葉は、数回閉じる動作をすると枯れると言われています。むやみに葉を閉じさせるのはやめましょう。

ハエトリソウの種類

ひとくちにハエトリソウといっても、その種類はとても多く、交配種がどんどん生み出されています。それだけ愛好家が多く、人気の植物ということです。種類によっては葉が緑だけだったり、姿がロゼット状だったり、エレクタタイプといって葉柄が立ち上がるタイプもあります。どの種類のハエトリソウも、基本的な管理は同じです。ハエトリソウの品種をいくつがご紹介します。

ハエトリソウの種類①ブリストルトゥース

不規則に並んだキザギザが魅力の品種で、ブリストルは剛毛という意味です。

ハエトリソウの種類②ホエール

ギザギザが細かく不規則で、これがクジラの尾びれに似ていることからこの名が付いたようです。

ハエトリソウ種類③ディオネアマスプシスラ赤い龍

なぜか日本の名前が付いている品種で、赤い葉が特徴的です。


ハエトリソウの種類④レッドピラニア

口を開けて牙をむく赤いピラニアのように見えるこの品種は、エレクタタイプといって、成長と共に茎が立ち上がっていきます。

ハエトリソウの種類⑤フューズドトゥース

口を開けて牙をむく赤いピラニアのように見えるこの品種は、エレクタタイプといって、成長と共に茎が立ち上がっていきます。

ハエトリソウの種類⑥ジョーズスマイリー

ジョーズが笑っているような幅広の捕虫葉を持つため、ジョーズスマイリーの名が付きました。管理の仕方で葉の色は変わってきます。

食虫植物・ハエトリソウの育て方①用土

食虫植物・ハエトリソウの育て方①用土1水苔

本来はあまり栄養分のない湿地帯に自生する植物なので、植え付ける用土も水苔単用が簡単です。植え付ける際は、購入してきたポットからそっと株を抜き取り、用土を軽く落としたあと、根を水苔で包み込むようにして植え付けます。

水苔とは

水苔は湿地に生える苔で、乾燥させたものが園芸用として販売されています。日本国内にも水苔の自生地がありますが、保護対象となっているため、採取は禁止されています。

食虫植物・ハエトリソウの育て方①用土2水苔以外

水苔以外の用土を使う場合は、水もちと水はけの良い鹿沼土や赤玉土の小粒のものに、同量のピートモスを配合したものなどが良いでしょう。一般的な花や野菜の培養土は、栄養成分が多すぎるためハエトリソウの育成には不向きです。

食虫植物・ハエトリソウの育て方②置き場所

食虫植物・ハエトリソウの育て方②置き場所 春から夏

ハエトリソウは太陽が好きな植物ですが、高温多湿が苦手です。室内で管理する場合はなるべく日当たりの良い場所に置きましょう。真夏の直射日光は葉焼けや蒸れの原因になるので、レースのカーテン越しの日が当たるくらいの場所を選んでください。屋外で管理する場合も、真夏は直射日光の当たらない半日陰で、風通しの良い場所に置いてください。室内でも屋外でも、夏場は用土が乾燥しやすいので、注意してください。

食虫植物・ハエトリソウの育て方②置き場所 秋から冬

ハエトリソウは寒くなると成長が止まり休眠します。ハエトリソウの耐寒温度は0度程度なので、屋外で管理する場合は軒下などで霜よけしましょう。地上部が冬枯れても、根が生きていれば春を待って芽吹いてきますので、屋外で越冬させる場合は、根が凍ってしまわないように注意してください。屋外で心配な場合は室内に取り込んだ方が無難ですが、室内に取り込んで越冬させる場合も、無理に暖かい場所に置かず、できれば日当たりの良い場所で、0~5度くらいの温度になるように管理しましょう。

食虫植物・ハエトリソウの育て方③水やり

食虫植物・ハエトリソウの育て方③水やり 春から夏

ハエトリソウは湿地帯に自生する植物なので、水切れを嫌います。基本的な水やりは腰水といって、受け皿に水を溜めた状態で、鉢の底面から吸水させます。ただ、夏場はこの水が傷みやすいので、少なくとも2~3日程度で水を取り替えましょう。根が完全に水に浸かってしまうと根の呼吸ができなくなるので、受け皿の水の深さは1~2センチ程度で、ときどき上から水を与えて鉢の中の老廃物などを鉢底から流してやりましょう。その際、感覚毛に水がかかるとストレスになるので、なるべく株元に水をやるようにしましょう。

食虫植物・ハエトリソウの育て方③水やり 秋から冬

ハエトリソウは寒くなると成長が止まり、休眠します。根が凍ると枯れてしまうので、腰水での管理はやめますが、冬でも乾燥させると枯れてしまうので、ある程度の湿度は保っておきましょう。特に冬場の空気の乾燥が苦手なので、温度を上げる必要はありませんが、湿度は保っておいてください。

食虫植物・ハエトリソウの育て方④肥料

食虫植物・ハエトリソウの育て方④肥料 春から夏

ハエトリソウは、春から秋が成長期ですが、もともとそれほど多くの肥料を欲しがりません。肥料を与える場合は、2000~3000倍に薄めた液体肥料を月に一回程度与えればじゅうぶんです。真夏は育成が弱まるため、7月中旬~8月いっぱいくらいまでは肥料は与えないようにしましょう。

食虫植物・ハエトリソウの育て方④肥料 秋から冬

冬は休眠に入るため、冬場の肥料も必要ありません。真夏の暑さが落ち着いて、9月頃から肥料を再開し、10月いっぱいくらいまでで終わりにしましょう。ハエトリソウは根があまり丈夫ではないので、肥料は極力薄めて与えてください。濃い肥料を与えると肥料焼けして根が傷みます。

ハエトリソウの植え替え方法


ハエトリソウを植え替える時期

ハエトリソウの植え替えは、休眠している2月頃に行うというのが一般的です。成長期に根をいじると、育成に悪影響が出やすいので、春と秋を避け、また真夏の高温多湿で株が弱っている時期を除くと、必然的に休眠期になるというわけですが、植え替え後の管理に問題がなければ、一年中どの時期でも植え替えは行えます。

ハエトリソウの植え替え①

準備の第一段階として、水苔を水で戻しておきます。水で戻した水苔は、堅く絞っておきます。このとき、他の植物の種子やカビ、コケ類などが紛れ込んでいる可能性があるので、できれば煮沸しましょう。水苔を煮沸した場合は、絞る前によく冷ましておきましょう。

ハエトリソウの植え替え②

植え替える株を鉢から抜き、根の状態を確認します。ハエトリソウの根は、元気な根も古い根も色が黒く、見た目では区別がつきにくいです。元気な根は、先端が白っぽくなっているので、それで見分けましょう。軽く触って崩れてくるような根はすでに死んだ根なので、極力取り除いてください。

ハエトリソウの植え替え③

硬く絞った水苔を手のひらに置き、そこに根を洗ったハエトリソウを置いて水苔で包んでいくわけですが、この時なるべく水苔の繊維を縦方向にそろえておくのがコツです。これは、水は上から下へ流れていくので、灌水した水がスムーズに流れるようにしてやるためです。そうすることで、老廃物が鉢の中に溜まるのを防ぎ、根の健康が保たれます。

ハエトリソウの植え替え④

水苔で根を包む際は、根と茎の境目の白い部分は、完全に包まるようにしてください。またその部分を強く握ると茎がつぶれてしまうので、水苔は株に近い上の方はふわっと、下の方はほどけないようにギュッと握り、ちょうどニンジンのような形にするのが理想です。

ハエトリソウの植え替え⑤

鉢底に小粒~中粒の日向土2~3センチ敷き、その上に水苔を巻いたハエトリソウを配置します。周囲を水苔で埋めていくわけですが、このとき水苔がきつすぎてもゆるすぎても状態はよくありません。あまりギュウギュウ詰め込んでしまうと、根が伸びられずに窒息してしまいますし、あまりゆるすぎると水がすぐに抜けてしまったり、植えた株がぐらついたりしてしまいます。鉢や株の大きさに応じて加減してください。

ハエトリソウの植え替え⑥

植え替えが完了したら、まずはたっぷりと灌水し、鉢底から水を流してやりましょう。こうすることで鉢内の微細なゴミが流れ、目詰まりしにくくなります。灌水した後は、腰水にして、数日間風通しの良い半日陰で管理してください。数日が経過したら、たっぷりと日の当たる場所に移動させ、通常の管理に戻しましょう。これで植え替えは完了ですが、経過はよく観察し、元気がなくなってきた場合は、おそらく根がきつくなっているので、水苔の量を再度調整しましょう。

ハエトリソウの増やし方

ハエトリソウの増やし方①株分け

ハエトリソウは、株分け、葉挿し、実生で増やします。株分けは大きくなった親株を複数に分割して植え直す方法で、一番成功率が高いものです。お手持ちのハエトリソウを増やしたい場合は、株分けが一番おすすめです。

ハエトリソウの増やし方②葉挿し

一枚の葉から発根させる増やし方を葉挿しと言います。一枚の葉で新しい芽を出すまでのエネルギーをまかなわなければならないので、株分けより成功率が下がります。ただ、ひとつの株をいくつにも増やすことができるので、一気に数を増やしたいときは効率的です。葉挿しする際は、株から丁寧に葉を取り外しますが、このときに根元の白い部分(基部)は必ず残してください。発根も発芽もここから始まります。基部を残した葉を、基部が埋まるように水苔に優しく挿しておくと、やがて基部から小さな芽が出てきます。それまでの間に捕虫葉が黒く枯れたりしますが、基部が無事なら芽が出てきますので、抜いたり動かしたりしないよう、気長に待ちましょう。

ハエトリソウの増やし方③実生

植物を種から育てる増やし方を実生と言います。ハエトリソウは5月ころから花を咲かせ、旨く受粉すれば7月から8月頃に種が熟します。種はしだいに発芽力が弱くなっていくので、採取してすぐに蒔く取り蒔きが良いでしょう。親と同じ環境で問題なく発芽するので、水で戻した水苔の上に種を蒔き、湿度を保ってやると発芽します。発芽までは用土が乾燥しないよう、十分注意してください。取り蒔きの場合は発芽率が良いのですが、すぐに蒔けない場合は冷蔵庫などで保管し、それから蒔くと成績が良いようです。実生株は成長が遅いため、親株と同じ大きさになるには数年を要します。

ハエトリソウの株分け方法

ハエトリソウの株分け①

ハエトリソウの増やし方で、最も効率的で成功率が高いのが株分けです。基本的には植え替えと同じ手順です。株分けを行う時期も植え替えと同じでかまいません。水苔から抜いた株は、古い根を整理し、良く洗っておきましょう。

ハエトリソウの株分け②

ハエトリソウは数年育てて株が充実してくると、分裂といって、基部が複数の鱗茎がくっついたように分かれてきます。株分けをする際は、そのこぶごとに分けてやるのが簡単です。分裂していない株も、ひとつの株に葉柄が3~4本ずつつくくらいで分ければ大丈夫です。

ハエトリソウの株分け③

株分け後は、植え替え後と同様に、数日間は半日陰で養生させます。用土の湿り具合を観察し、株がぐらついたり弱ったりしてこなければ、通常の管理に戻してかまいません。

 

ハエトリソウが枯れる原因①日光

日照不足


ハエトリソウは日当たりの良い場所を好みます。屋外で管理する場合も、室内で管理する場合も、なるべくよく日に当てるようにしましょう。日当たりが悪いと、徒長したり、葉の色がくすんできて、やがて枯れてしまいます。

真夏の直射日光

ハエトリソウは日当たりの良い場所を好みますが、真夏に西日がガンガン当たるような場所に置くと、葉焼けして枯れてしまいます。室内から屋外に移す場合は、いきなり一日中日の当たる場所に置かず、室内と同等の光量の場所から、半日陰、日向と、徐々に慣らしていきましょう。

ハエトリソウが枯れる原因②水

水切れ

ハエトリソウは湿地帯に自生する植物なので、乾燥を嫌います。真夏にうっかり腰水の水がなくなってしまうと、用土が乾燥して、すぐに枯れることになります。水切れしないように注意しましょう。また、冬は空気が乾燥するので、冬でも水切れには注意しておきましょう。

水の腐敗

腰水にしておくと、夏場は受け皿の水が腐る場合があります。そうなると当然株にも悪影響が出て枯れることがあるので、夏場は2~3日に一度は受け皿の水を換えましょう。また、その際は株元に水をやり、用土の中の老廃物などを流してやるとよいでしょう。

ハエトリソウが枯れる原因③栄養

肥料過多

ハエトリソウは、栄養成分の少ないところで自生しているため、あまり肥料成分が多いと根が肥料焼けして枯れることがあります。やりすぎるくらいならやらない方がずっとましです。ハエトリソウは、肥料や虫を与えなくても問題なく育つと覚えておきましょう。

ハエトリソウが枯れる原因④温度

高温

ハエトリソウは、腰水で管理することが多いため、真夏に受け皿の水が高温になって、根が煮えて、そのまま枯れることがあります。受け皿の色や素材を工夫して、なるべく溜まった水の温度が上がらないようにしておきましょう。また、低温よりは高温が苦手なので、夏場は風通しの良い場所に置いてください。

低温

ハエトリソウの耐寒温度は、0度くらいと言われています。寒くなると地上部が枯れますが、春になるとまた新芽を出してきます。このときに、根が完全に凍ってしまうほどの低温に当たると枯れてしまうので、冬場は軒下などで霜よけするか、室内の暖かすぎない場所に取り込みましょう。また、室内で管理していても、真冬の窓際は外気と変わらない場合があるので、室内でもあまり寒すぎる場所は避けましょう。

ハエトリソウが枯れる原因⑤虫

虫の与えすぎ

ハエトリソウは、「虫を栄養にする植物」ではなく、「虫も栄養にすることができる植物」です。虫を欲しがる植物ではないので、むやみに与えるのはやめましょう。葉を閉じるという動作は、ハエトリソウにとって大きな負担です。勝手に捕まえる分にはかまいませんが、頻繁に虫を与えると、それだけで大きな負担になりますし、消化しきれない虫が腐って、葉を腐らせて枯れることにもなりかねません。

害虫

ハエトリソウは、基本的には病害虫の少ない植物ですが、風通しの悪いところで育てていると、アブラムシやハダニによる被害に遭うことがあります。特に室内で管理している場合、葉が乾燥するとハダニが付きやすくなります。室内で管理している場合は、ときどき葉水をするなど、用土だけでなく株の乾燥にも注意してください。株が健康で元気なら、アブラムシがたかっても枯れることはありませんが、株が弱った状態で害虫にたかられると、一気に枯れてしまうことがあるので注意が必要です。

まとめ

食虫植物の代表ともいえるハエトリソウは、多少気難しいところはありますが、基本的には丈夫で育てやすい植物で、とてもたくさんの種類があります。植え付ける環境と水の管理さえ間違えなければ、比較的寒さにも強いので、関東以南であれば屋外でも越冬できるようです。増やし方もそれほど難しくはありません。一番注意しなければならないのは、捕虫は必須ではないということです。虫を消化して栄養にすることはできますが、失敗すれば消化不良の虫が腐ってハエトリソウも枯れてしまうもろ刃の剣です。ハエトリソウの性質をよく理解し、害虫駆除目的ではなく、ハエトリソウそのものを可愛がってあげましょう。