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真珠を作る貝「アコヤガイ」とは?その生態と真珠が出来るまでの工程を解説!

普段、なんとなく真珠貝とか呼んでいますが、日本では養殖真珠は主にアコヤガイから作られます。アコヤガイってどんな貝なんでしょうか?あのきれいな独特な光沢を持つ真珠の作り方は?アコヤガイの生態は?他の貝と何か違うの?この稿ではそのあたりを明らかにしていきます。
更新: 2021年3月15日
ふらわ
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はじめに

みなさんは真珠はお好きですか?特に女性の方。6月の誕生石ですね。貝から出来るとても不思議な宝石で、半透明でキラキラ、またはギラギラ?光る宝石が多い中でなんとも柔らかい、優しい七色の光沢を放つ日本人にもお馴染みの真珠。

今回はその真珠を作るアコヤガイとはどんな貝なのか、食べられるのか、おいしいのか、そして真珠ができるまで(作り方)をご紹介します。

真珠貝はアコヤガイ?

真珠貝=アコヤガイではない

真珠が貝から作られることは多くの人が知っていますが、養殖真珠はアコヤガイという二枚貝から採れるという点になると若干常識でもなくなります。しかし、さらに実は養殖真珠はアコヤガイ以外からも採れるのです。「真珠貝」というのは必ずしもアコヤガイだけを指す言葉ではなく真珠を産する貝の総称なのです。

アコヤガイ以外の真珠貝

アコヤガイ以外の真珠貝にはクロチョウガイが有名ですが、その他にもシロチョウガイ、マベなどがあります。いずれも海水に棲むウグイスガイ科の貝です。また、イケチョウガイという淡水(琵琶湖固有種)に生息する貝からも真珠が採れます。

貝殻がある貝類であれば真珠を産出する可能性があるそうです。巻貝から養殖される真珠もあります。※画像:イケチョウガイ

アコヤガイってどんな貝

アコヤガイ(阿古屋貝)はウグイスガイ目ウグイスガイ科の二枚貝です。大きさは成貝で10cmほどになり、色は緑っぽく、個体差がある黒い筋模様が入っています。表面は滑らかではなく牡蠣(カキ)の様に層状なっています。

形はアサリ、ハマグリの様な二枚貝ではなく、どちらかと言うと、二枚の貝が結合している部分(蝶番)の貝殻に角があるホタテガイに近い形状です。内側はきれいな真珠層になっています。

アコヤガイの生態

アコヤガイは暖かい熱帯、亜熱帯の海に棲息し、日本では房総半島以南の内湾の海で見ることが出来ます。カキの様に足糸で岩場にくっついていて、深いところでは20mぐらいから浅いところは干潮時に露出するぐらいの水深に棲んでいます。

産卵期は5~9月で1㎜弱のアコヤガイ稚貝はプランクトンをエサとして成長し、稚貝は2年ほどで成貝となります。稚貝の時点では雌雄同体で成長とともに雌雄異体になるようで、寿命は12年前後です。

真珠とは

養殖真珠と天然真珠

真珠は貝の体内で作られるいわゆる真珠層のかたまりで、要は炭酸カルシウムという、貝殻と同じ成分で出来ています。

真珠には大きく分けて、人間が“核”と呼ばれるイシガイという淡水二枚貝の貝殻を丸く加工したものをアコヤガイの外套膜と呼ばれる貝殻作る成分を分泌する臓器があり、その外套膜と一緒に挿入して人工的に作るもの(養殖真珠)と、自然の貝に偶然何らかの要素で外套膜が体内に入り込んで作られたもの(天然真珠)があります。


丸くない真珠もある

つまり、丸い真珠は丸い核を入れるから丸くなるのであって、天然真珠がきれいな球体になることは基本あり得ません。しかし養殖真珠の中にも丸くない物があります。

イケチョウガイなどを使って作られる淡水パールと呼ばれる養殖真珠は核を使わず外套膜だけを挿入するため、生成される真珠の形はドロップ(涙型)、ライス(米粒状)など様々です。

またマベガイから作られるマベ真珠は半円の核を使う半円形の真珠が出来ます。※画像:淡水パール

真珠の色もいろいろ

日本産のアコヤガイから作られる真珠(アコヤ真珠)に代表されるように真珠の色のイメージは白なのですが、養殖の母貝になる貝により真珠の色は変わってきますし、個体差でも違ってきます。

有名なものでブラックパール(黒真珠)がありますが、これはクロチョウガイから作られる真珠です。シロチョウガイから作られる南洋真珠は産地により黄色、金色、青みがかった色があり、ピンクガイから作られるコンクパールはピンク色をしています。

真珠の価値

天然真珠、真円ではない

真珠の歴史

真珠は太古の昔からその神秘的な輝きで貴重な宝飾品として扱われてきました。古代中国、エジプト、メソポタミア、ペルシャ、ローマなどの文献にも真珠の存在が書かれており、薬として服用した例も数多くあり、現在でも薬としての使用もあるようです。

当時の真珠というのは全て天然真珠ですから、かなり希少価値がありました。その当時の真珠の産地はアラビア半島やインドの海が中心だったようです。

現在の真珠の価値

真珠は昔、天然真珠しかなかった時代と比べると養殖で大量生産できるようになると当然その価値は落ちました。1920年代に養殖真珠の生産が増えるとそれまで天然真珠の産地だった国や、天然真珠を扱っていた宝石商などは大打撃を受けました。

現在では天然と養殖では差はなく品質が高いかが問題になります。サイズだけで言えば、黒真珠、南洋真珠はアコヤ真珠よりも大きいのですが、現時点で養殖真珠で一番価値が高いのは日本で生産されるアコヤ真珠なのです。

アコヤ真珠の選び方

アコヤ真珠を例にとりますと、形(真円に近い)、照り(光沢)、巻(真珠層の厚み)、傷(傷のあるなし)、そしてサイズになります。なかでも、"巻"は真珠特有の品質で、核の上にどれだけ真珠層が巻いているか(厚みがあるか)になります。

サイズについては母貝となるアコヤガイのサイズがある程度一定ですので必要以上に大きな核を入れることはできません。2mm~10mmが基本サイズで、10mmに近いほど希少になり値段も高くなります。

サイズ以外の項目が最上級のものをアコヤ真珠では"花珠(ハナダマ)"と呼びます。

真珠の作り方~アコヤガイから真珠ができるまで~


真珠ができるまで1.母貝を育てる

昔は自然のアコヤガイを母貝にしていたのですが、現在は母貝を作るところから養殖は始まります。より良い母貝を作るため、健康で、貝殻内側の真珠層が美しい雌雄のアコヤガイから精子、卵子を採取して人工授精させ稚貝を作ります。

真珠養殖業者はこの稚貝を買って母貝に育てます。稚貝から2年育てると母貝として準備を始めます。具体的には卵は邪魔になるので抑制・卵抜きをし、アコヤガイが口を開けた状態を維持するため栓刺しをし核入れに備えます。

真珠ができるまで2.核入れ作業

養殖3年目でようやく核入れ(外套膜を含む)をします。核入れの準備が出来た母貝にピースと呼ばれる2㎜ほどの外套膜片とアメリカ産のイシガイの貝殻を丸く加工した核を、ピース、核の順番に母貝の生殖巣に挿入します。

外套膜は施術後袋状になり核を包み真珠を真円に育てます。この時挿入する核の大きさは作りたい真珠のサイズによって変わります。また小さい核を入れる場合には2個挿入するようです。

真珠ができるまで3.核入れした貝の管理

核入れをした際に出来た切開キズを回復させるまで海中の養生カゴで2~3週間養生させ、その後潮の流れが良い沖に出し、イカダに吊るして真珠を育てさせます。その間、貝殻についたフジツボや海藻を掃除したり、水温が下がったら、温かい水域までイカダを移動したりしながら浜揚げの時期まで大切に管理します。さあ、真珠ができるまでもう少しですよ。

真珠ができるまで4.浜揚げ

浜揚げとは核入れをした真珠の収穫のことでその作業は冬に行われます。浜揚げまでの期間は核の大きさなどにより1年未満~2年と変わってきます。無論、全部が全部立派な真珠ができるわけではありません。

母貝が死んだり、真珠がちゃんと形成されなかったり、商品にならないレベルのものが出来たり、高級品になる物はほんの数パーセントしかできません。真珠ができるまでには繊細で地道な作業を長期間続けて浜揚げを迎えるのです。

浜揚げの後アコヤガイはどうなるの?

つまり真珠を取り出す=終わりです

真珠を取り出した後、アコヤガイはどうなるのか気になりますよね。浜揚げされたアコヤガイはまず身と貝柱に分けられます。この時点では身から真珠は取り出されておらず、この身をミキサーに掛け、身を砕いて洗い流し、真珠だけを回収します。

貝柱は食用として加工されます。つまり、アコヤガイは一度浜揚げされると、再度真珠養殖に回ることはなく、逃がされるわけでもなく、真珠を回収する際に処分されるのです。

アコヤガイは食べられるのか?いや、おいしいの?

身は真珠を取り出す過程でミキサーで藻屑になってしまうんですね。で、貝柱だけ食用として残されるのですが、身は美味しくないからそういう扱いなんでしょうか。では、貝柱はどのようして食べるのでしょうか?

ある意味、真珠の作り方より貝柱料理の作り方のほうが気になりますよね。定番は貝柱のかき揚げ、刺身、炊き込みご飯ですが、生食用はほぼ地元で消費され他地域ではなかなか手に入りません。加工品では真珠漬と言われる酒粕漬けが絶品です。


貝殻はどうするの?

ついでながら、貝殻ですが、貝殻の再利用が一番難しいようです。砂浜に落ちていればコレクションになるようなきれいな真珠層の内側の貝殻なんですが、粉末にして肥料、飼料に使われることが多く、装飾品の材料としてのニーズは多くないようです。クロチョウガイ、シロチョウガイの貝殻はボタンの材料になるので高値で取引されるそうです。

アコヤ真珠の養殖と御木本幸吉

真珠の作り方を確立した真珠王、御木本幸吉

アコヤガイ使った養殖真珠の作り方はいつ、どのように確立されたのでしょうか?養殖真珠の作り方については欧米でも研究されていましたが、近代真珠養殖の基礎を築いたのは御木本幸吉(現・ミキモト創始者、1858~1954)でした。

彼は半円真珠の養殖法で特許を得、真円真珠の養殖にも成功。現在の核入れ(核と外套膜の一部を挿入)などを含む養殖法を確立し財をなし、真珠王とも呼ばれました。是非とも彼の功績を身に三重県英虞湾のミキモト真珠島に行きましょう!

日本の四大アコヤ真珠養殖地

アコヤ真珠の養殖にはある一定の条件があり、養殖に適した地域、海域でないと品質の良い真珠が出来ません。現在、日本のアコヤ真珠の四大産地は愛媛県、三重県、長崎県、熊本県で国内で約90%のシェアを占めています。

それ以外では、鹿児島県でマベ真珠、沖縄県で黒真珠を養殖しています。ちなみに養殖真珠の生産量世界一は中国ですが、内訳は圧倒的に淡水真珠です。

まとめ

アコヤガイの養殖真珠はなんと日本人が開発していました。これは天然真珠の価値を大きく変える革命的発明だったのです。そして現在も日本は生産量では中国などに及びませんが、世界に認められる技術で品質に関しては現在もナンバーワンで有り続けています。

真珠養殖の過程もとても地道で根気がいる作業でしたね。真珠養殖をしている地域に行ったら、真珠の選び方や貝柱料理も思い出してくださいね。※画像:アコヤガイのかき揚げ