HEAT弾(成形炸薬弾)とは?その仕組みや威力を解説!戦車用砲弾!?のイメージ

HEAT弾(成形炸薬弾)とは?その仕組みや威力を解説!戦車用砲弾!?

従来の砲弾よりも小口径で大きな威力を発揮するHEAT弾(成形炸薬弾)は対戦車用の砲弾として第二次世界大戦期から現代に至るまで数多く使用されています。HEAT弾(成形炸薬弾)の本当の魅力や仕組みについて詳しく解説していきたいと思います。

2018年02月11日更新

E.麻野
E.麻野
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目次

  1. HEAT弾(成形炸薬弾)とは
  2. HEAT弾(成形炸薬弾)の原理
  3. HEAT弾(成形炸薬弾)の威力
  4. HEAT弾(成形炸薬弾)への対策ー現代編ー
  5. HEAT弾(成形炸薬弾)への対策の対策
  6. HEAT弾(成形炸薬弾)への対策ーWWⅡ編ー
  7. HEAT弾(成形炸薬弾)を有名にした兵器
  8. 自己鍛造弾とは?HEAT弾(成形炸薬弾)との違い
  9. まとめ
  10. おまけ

HEAT弾(成形炸薬弾)とは

the_tiger_tankさんの投稿
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HEAT弾とは日本語で成形炸薬弾という名称の対戦車用の砲弾・弾薬形式の一種です。第一次世界大戦前から登場したこの砲弾を用いて強力な戦車と戦いました。

当時独ソ戦に代表される地上戦では数多くの戦車が戦場に投入され、またその性能向上のために装甲は分厚く硬くなっていきました。ですが、これに対抗するための手段として砲を大きくすることには限界がありました。

HEAT弾(成形炸薬弾)対戦車用に特化した砲弾

HEAT弾が登場するまで装甲目標(ハードターゲット)には徹甲弾を、非装甲目標(ソフトターゲット)には榴弾を使用していました。例外はあり、ハードターゲットにも榴弾を用い履帯や衝撃による内部破壊を行うといったことは行われていましたが、第二次世界大戦終盤になるとこれも効果が薄れてきたという事情があります。

徹甲弾の限界

motti_moratoriumさんの投稿
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徹甲弾とは運動エネルギーを利用する砲弾であるため、口径が大きく(質量が大きく)初速が速いことが求められました。

ですが、これらの条件をクリアするためには人の手で扱えないぐらいの重量と長大な砲身が必要となってくるようになったのです。

HEAT弾(成形炸薬弾)の原理

HEAT弾は徹甲弾が属する運動エネルギー弾と違い、化学エネルギー弾という分類に当たります。これは榴弾(粘着榴弾も含む)といった爆発力を砲弾の威力の原理として取り扱う種別です。

HEAT弾が用いる原理はモンロー・ノイマン効果と呼ばれる爆発に指向性を持たせる現象を利用しています。

モンロー・ノイマン効果とは

この動画に出ている後ろから爆発を順番に起こすものをモンロー効果と言います。そして、円錐の頂点に達したときにその中央から噴き出すエネルギーの波をノイマン効果と呼びます。

この二つを合わせてモンロー・ノイマン効果というのですが、円錐の頂点に爆発が到達したときに起こる爆発エネルギーの一点集中化を利用して装甲を破るというのがHEAT弾の原理なのです。

最終的に装甲に穴をあける原理は金属噴流

上の動画の右側にある円錐部分は銅が使われることが多く、モンロー・ノイマン効果を用いた原理での成形炸薬弾は中心軸に高温高圧の金属噴流(メタルジェット)を発生させることにより相手の装甲を瞬時に穿つことを目的としています。

化学エネルギー弾に属すると解説しましたが、最終的にはこのメタルジェットの運動エネルギーがカギとなるわけです。

HEAT弾(成形炸薬弾)の威力

kosuke_hayashiさんの投稿
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HEAT弾の威力は、対戦車戦に使用されはじめた第二次世界大戦の時期で直径のおよそ2倍ほど現代で5-8倍といわれています。

吹き出るメタルジェットの速さはマッハ20にもなるといわれており、口径が大きいほど威力が高くなるのはほかの徹甲弾や榴弾と同じです。

HEAT弾(成形炸薬弾)を用いるメリットとは?

HEAT弾を用いるメリットとして最も大きなものは巨大な砲を用意しなくてもよいことです。徹甲弾のように初速を必要とせず、命中させることが出来れば撃破しやすいHEAT弾は個人携帯用の対戦車火器に用いられることが多くあります。

bfmc_clark_kentさんの投稿
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個人携帯無反動砲「AT4」を持った米軍兵士

HEAT弾(成形炸薬弾)を使えない砲

zebra_hatさんの投稿
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砲身にライフリングが刻まれているライフル砲は、砲弾が回転しモンロー・ノイマン効果を発揮するための中心軸から遠心力で爆発力を逃してしまうためHEAT弾を用いることはできません。

そのため、第二次世界大戦以降の戦車はだんだんライフル砲ではなく溝がない滑腔砲へと切り替わっていきました。

HEAT弾(成形炸薬弾)への対策ー現代編ー

歩兵でも戦車に対抗できる強力な砲弾として登場したHEAT弾ですが、実は明確な対策がいくつかあります。この項目でそれらをご紹介していきましょう。

金網

beagleman1966さんの投稿
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スラット・アーマーと呼ばれるこの金網はHEAT弾の信管を作動させなかったり、仮に爆発してしまったとしてもメタルジェットの有効範囲は数十cmのため、このように空間をあけてしまえば装甲に達する前にその威力を減じることが出来ます。

爆発反応装甲

hobosphotoさんの投稿
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イスラエルが最初に実用化した対HEAT弾用の追加装甲です。原理としては、HEAT弾の着弾に合わせて自ら爆破し、メタルジェットの形成を妨害する目的で開発されました。

モンロー効果(上の動画)では後方から順番に爆発の衝撃を伝える必要がありますが、逆方向からも爆圧をかけて防御しようというものです。

原理としては単純で、効果的なこの爆発反応装甲ですがデメリットとしては友軍歩兵が近くにいた場合破片で被害を出してしまうため運用が難しいところがあります。

k.koshoさんの投稿
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ちなみに爆発反応装甲ですが、ガンダムにも装着したモビルスーツがいくつかあります。画像のアレックスは機密保持の目的でマスキングがメインの目的ではありましたが、これによってチェーンマインから身を守りました。

複合装甲

leisurepools_sunshinecoastさんの投稿
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複合装甲は複数の素材を層のように重ね合わせた装甲で、通常の徹甲弾などに対する防御力に加えてHEAT弾のメタルジェットに対しては中間に粘度の高い材質やセラミックのように砕けやすい素材を挟むことによりその浸徹を妨害する効果を持っています。

ひとつの装甲で複数の砲弾に対する高い防御力を発揮する装甲です。

HEAT弾(成形炸薬弾)への対策の対策

高威力のHEAT弾への対策がなされると、それに対しての更なる対策が講じられました。

日本語として「対策の対策」というのは少しおかしい感じがしますが、ご紹介していきたいと思います。

ホップアップによるトップアタック

戦車に出入りする都合上から、ハッチがある上部に金網を設置することは難しく、また爆発反応装甲も同じく上部には取り付けられない場合が多いです。この方法はミサイル限定ではありますが、目標到達前に上空へと飛び上がり敵戦車の上部へと打撃を与える方法として現在でもかなり有効な方法として扱われています。

もともとは、対策の対策という意味合いではなく戦車上部の装甲が薄いことが標的を上部に絞る理由となっています。

タンデム弾頭

yuri.uchiさんの投稿
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タンデムはバイクの二人乗りなどを意味する言葉で、その言葉通り一つの砲弾に二つ以上の弾頭が搭載されている弾薬です。先頭に小型で低威力な弾頭を積み、これがスラットアーマーや爆発反応装甲を先に無力化したうえで高威力の後続弾頭が、敵戦車の装甲を貫徹する役割を担っています。

artesh_sepah_iranさんの投稿
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RPG-29のタンデム弾頭です。ロシアの個人携帯火器の中には3発タンデム弾頭も存在します。

HEAT弾(成形炸薬弾)への対策ーWWⅡ編ー

HEAT弾は第二次世界大戦時から対戦車兵器として利用されてきました。もちろん、戦車側にもただ撃たれているだけでなく、現代とは違う対策がありました。

シュルツェン

k.koshoさんの投稿
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原理は上でご紹介しているスラットアーマーと同じものですが、車両本体と着弾地点の空間を作ることによりメタルジェットの浸徹を妨害するためのものです。

予備履帯

e.f.s.fさんの投稿
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敵からの攻撃だけでなく、通常の装甲でも戦車の足回りにかかる負担は大きいため予備の部品を戦車車外に搭載することは多々ありました。偶然の結果ではありますが、これらが盾となり命拾い戦車も数多くありました。

土嚢

ninanagatsukiさんの投稿
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戦場の陣地構築時などに土嚢は現代でもよく使用されます。移動する際に土嚢の運搬を兼ねて、戦車の周りに搭載した例が数多くありました。

はじめはただ運搬のために積載していたもので、これを見た米軍司令官も「みっともないからやめるよう」に命令を出しますが、偶然の産物か土嚢が追加装甲の役割を果たし生存した戦車が増えたため土嚢を積載した戦車は連合国側で後を絶ちませんでした。

HEAT弾(成形炸薬弾)を有名にした兵器

バズーカ

imperial.guard.aobaさんの投稿
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かなり有名な平気で、「肩にかついで打ち出す大口径の火器」の代名詞的な存在になっています。実際には、第二次世界大戦中に使用された60mmのものと89.6mmのスーパーバズーカのみがこのバズーカの名を冠した兵器ではありますが、当時ドイツの強力な戦車に悩まされた米兵たちを力強く支えた兵器です。

パンツァーファウスト

wwii_travelerさんの投稿
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ドイツで配備されていた使い捨て式の無反動ロケットで、わきに挟んで使用します。決して胸で支えて撃ってはいけません。

一見こん棒のように見えますが、実際に飛ぶのは画像の矢印より上の部分です。砲身が無いため照準が難しく、射程も短いのですが戦争末期の強力な戦車たちに歩兵が対抗する貴重な手段を提供しました。

RPG-7

best__weaponsさんの投稿
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映画の中でもアールピージー!という叫び声を聞いたことがある方がいるかもしれません。無反動砲であるRPG-7は中東を中心に使用されているイメージですが、調達費用が安く世界各国で使用されています。作りは堅牢でソヴィエト製兵器らしさがありますし、砲弾1発あたりの価格も他の兵器と比べれば安価であることが世界中で使われることの助けとなっています。

自己鍛造弾とは?HEAT弾(成形炸薬弾)との違い

成形炸薬弾と勘違いされやすいのがこの自己鍛造弾です。爆発により、金属を成形するという共通点はありますが、爆薬レンズによって発射される鍛造弾は威力が高く、直径の千倍程度の威力を発揮します。

その反面発射するなどの制御が難しいため主に対戦車クラスター弾などに使用されています。

まとめ

HEAT弾は威力が高い化学エネルギー弾

afshin1339_さんの投稿
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HEAT弾は、徹甲弾のような運動エネルギー弾と違い弾速が遅くても安定した威力を発揮することが出来ます。その威力は砲弾の大きさに対しておよそ2倍から最大で10倍ほどの装甲を貫徹できるぐらいです。

戦車砲弾はもちろん個人携帯火器も

arsenal_vkさんの投稿
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HEAT弾は小型の弾頭でも、高い貫徹力を得られるため個人が携帯できる大きさの火器でも十分に戦車を撃破することができるようになっています。その多くは、無反動砲やミサイルといった形態をとっているため個人に対しては大きな砲弾でも、あまり反動を感じずに撃つことが出来ます。

ちなみに、画像のRPG7ですが、東南アジアで中古自動車に対して発射することが出来るツアーがあるようです。

おまけ

パンツァーファウストを胸で支えるとどうなるかをフィンランド継続戦争の映画タリ・イハンタラからご紹介いたします。
日本語字幕で、パンツァーファウストの使用法も紹介されていますので突然の対戦車戦闘でも安心できますね♪

無反動砲はバックブラストに注意

RPG-7をはじめとする無反動砲は反動を殺すために発射機後部からバックブラストやカウンターマスという逆方向への力も加えていますので、室内で発射したり後方に人がいるような環境で射撃をしてしまうと……動画のようになってしまいます。動画では射手は生きているようですがこれはかなり幸運な事例ですね。


後片付けが大変ですね♪

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