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【登山地図】見方・読み方など基本知識をご紹介!

登山地図は、登山において欠かせないアイテムです。しかし、地図を使いこなすには、見方や読み方の習得と練習が必要です。登山地図として、「山と高原地図」と国土地理院の2万5000分の1地形図を紹介し、具体的にどう使うのか、基本知識を解説します!
2020年8月27日
anntena
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登山地図とは?

登山地図とは、登山で山を歩く際に使う地図のことをいいます。 登山の際に、登山地図は必須アイテムです。普段街中の知らない場所へ行くために地図を使いますが、同様に登山でも必要になります。 地図を持たずに登山すると、分岐したルートで道を間違えたり、道に迷って元のルートへ復帰するのが難しくなったりするなど、遭難のリスクが高くなります。そのような事態を避けるためにも、登山をするときは、必ず地図を携行する必要があります。

また、地図は持っているだけでは意味がなく、使いこなせるようにしておく必要があります。登山地図を使いこなすには、基本知識を理解したうえで、ある程度練習が必要になります。 登山地図とはどんなものがあって、どのように使いこなすのか、以下に詳しく解説します。

2種類の登山地図

登山地図は大きく分けて、2万5000分の1地形図と登山ルート地図の2種類あります。

1.2万5000分の1地形図

街中を歩くときは、標識や建物などを目印にして道を歩きますが、登山では分かりやすい目印がありません。 では、山では何を目印にするかというと、地形によって道を判断します。山は標高の変化が激しく、地形はいろいろ変わります。 地形の変化を示すのが地形図で、登山地図として使います。地形図には、等高線が描かれていて、標高の変化を表しています。 地形図は縮尺によって、等高線の間隔が変わります。登山地図では主に、2万5000分の1や5万分の1の地図が使われますが、より細かい間隔(10m)の2万5000分の1地図を使った方が、地形の判別しやすく、おすすめです。

2.登山ルート地図

各出版社から発行される登山ガイドブックには、登山道やコースタイムを記載した、登山ルート地図が付属しており、これを登山地図として使います。 地形図に各種情報を記載した登山ルート地図や、もっと簡易的な地図に必要な情報を記載しただけの登山ルート地図もあります。 このような登山ルート地図は、読み手にとって理解しやすいように作られており、先ほど紹介した2万5000分の1地形図よりも扱いやすく、初心者の方でも安心して使うことができます。

山と渓谷社の分県登山ガイドです。左側のページに、登山ルート図が描かれています。

2万5000分の1地形図と、登山ルート地図を併用しよう

2種類の登山地図を紹介しましたが、登山のときは両方とも持って行き、併用することをおすすめします。 登山ルート地図は、登山道やコースタイム、その他注意点の確認に使います。 一方、2万5000分の1地形図は、登山ルート地図だけでは判断できない場面で使います。より詳細にルートを把握し、自分がどこを歩いているか、また、目的地に対してどちらを向いて歩けばいいのか判断したいときに使います。 登山道が綺麗に整備されて、しかも登山者の多い山では、登山ルート地図だけで、問題ないかもしれません。しかし、作業道などの分岐によって道を間違いやすい低山や、あまり人気のない山に行くと、2万5000分の1地形図を使って、現在地や進む方向の確認と判断が必要な場面が出てくる可能性があります。 よって、登山のときは、登山ルート地図だけでなく、2万5000分の1地形図も持って行き、場面によって使い分けるようにしましょう。

おすすめの登山ルート地図「山と高原地図」

登山ルート地図としておすすめしたいのが、昭文社の「山と高原地図」です。「山と高原地図」は、登山道、コースタイム、注意点など多くの情報が記載された登山地図と、コースガイドが記載された冊子が同封されています。山域別に59点(2017年9月現在)も発刊されており、自分が行きたい山域ごとに揃えていくことになります。

「山と高原地図」がなぜおすすめかというと、以下の理由からです。 ・カラーで見やすい ・コースタイムが参考になる ・難易度が分かる ・情報が豊富、注意点も記載されており、登山ルートのイメージがしやすい ・紙に耐水性があり、水に濡れても大丈夫 「山と高原地図」は、眺めているとその山がどんな山かイメージでき、わくわくさせてくれます。いろんな山域の地図を見比べて、どの山のどんなコースに登ろうかなと思案する時間はとても楽しいものです。 行きたい山があるなら、その山域の「山と高原地図」を入手して、登山の計画を立ててみましょう。

「山と高原地図」の見方① 登山ルート図、コースタイムなど

「山と高原地図」はカラーの5万分の1地形図に様々な情報が記載されており、赤線で登山道を示しています。登山道のラインには登りおよび下りのコースタイムも記載されています。カーブがある場所も、しっかり曲線で示しており、この地図があると、自分がどこを歩いているかとてもイメージしやすいです。 地図には、登山道のほかに、駐車場、公共交通機関、道路、山小屋、テント場、水場、見どころ、花、その他施設や建物名など、登山に必要な情報が多く記載されています。 これだけたくさんの情報が一つの地図に盛り込まれている点が、「山と高原地図」の素晴らしいところです。

カラーで見やすく、情報も多いです。

周辺の道路も含めた、広域地図も付属しているため、交通アクセスの検討もできます。

「山と高原地図」の見方② ルートの難易度

「山と高原地図」は、登山ルート上で、歩行の際に注意すべき点や、迷いやすい箇所、危険な箇所の情報も記載しています。それから、道が不明瞭で難易度が高い場合は、赤色の実線ではなく、点線でルートを記載しています。 これらの情報から、そのルートの難易度を推し量ることができるため、自分の実力に合わせた登山ルート選定ができます。


「山と高原地図」の見方③ 登山コース情報の付録冊子

「山と高原地図」には、代表的な登山コースについて、見どころや状況、難易度などについて解説した冊子が付録しています。執筆者が自ら歩いて書き記した貴重な情報で、その登山コースを明確にイメージすることができます。 この付録冊子は、登山コースを選定する際の参考情報として使うとよいでしょう。

2万5000分の1地形図とは?

次に、国土地理院の2万5000分の1地形図について、見方・読み方を紹介します。 地形図は、地形を把握するための地図です。 これまで紹介した「山と高原地図」と違い、2万5000分の1地形図には、文字情報は地名くらいしかなく、ほとんど等高線と地図記号で描かれています。その代わりに、等高線がくっきりと描かれており、山の地形をとてもイメージしやすくなっています。 地形図の読み方を習得すると、目印の少ない山の中を歩いても、地図上のどこを歩いているか分かり、より自分の登山に対する体力や実力を把握できるし、道迷いによる遭難も防ぐことができます。 是非とも、地形図の見方・読み方の習得をおすすめします。

2万5000分の1地形図の閲覧・入手方法

2万5000分の1地形図は、国土地理院のHPで閲覧できます。 下記の国土地理院のHPを開き、"地理院地図"というリンクをクリックすると、地図が開きます。マウスのスクロールボタンを回して拡大していくと、2万5000分の1地形図が表示されます。

地理院地図
地形図、写真、標高、地形分類、災害情報など、国土地理院が捉えた日本の国土の様子を発信するウェブ地図です。地形図や写真の3D表示も可能。

国土地理院の地図は印刷機能もついており、下記の画像のように、画面右上の"機能"→"ツール"→"印刷"とクリックしていくと、印刷が行えます。 自分が歩く予定のルートの地形図を事前に印刷し、登山当日はマップケースなどに入れていつでも確認できるようにしておくとよいでしょう。

国土地理院HPの地図の画面右上で"機能"→"ツール"→"印刷"とクリックして進むと、印刷が行えます。

国土地理院の地図は、日本地図センターが販売(下記のリンク)しており、全国の書店やネットショッピングで購入することもできます。購入単位は、日本の国土を約100平方キロメートルずつに分割した1面ずつになります。

地図・空中写真を買う | 日本地図センター
国土地理院の地図・数値地図・空中写真をはじめとした地図の総合サイト。全国の地図閲覧、通信販売、地図のQ&A、地図・GISリンク、クイズ、GISソフト一覧、電子国土など、多種多様なサービス。

2万5000分の1地形図の読み方

2万5000分の1地形図を登山地図として使うには、地形図の読み方を習得する必要があります。特に、等高線は山の地形を表す重要な要素なので、よく見方を理解しておく必要があります。 2万5000分の1地形図の見方・読み方を習得するために、必要なポイントを以下に説明します。

等高線

等高線を読めると、山がどのような地形になっているか想像できます。 登山中に、現在およびこれまで歩いたルート、この先歩く予定のルートについてイメージができるでしょう。道が険しいのか、緩やかなのかも、容易に想像できるので、登山に対して気持ちの余裕が生まれるでしょう。

では地形図の等高線はどのような見方をすればよいのでしょうか?以下に説明します。 2万5000分の1地形図では、2本の等高線の間隔は10mとなっています。地形図上で、2本の間隔が見た目に広くても狭くても10mです。 地形図を見たとき、等高線の間隔が狭く密集した場所があると思います。そのような場所は傾斜が急な場所です。 逆に間隔が広くなった場所は、傾斜が緩やかになっています。 このように、等高線の間隔が密集しているか、まばらになっているかで、傾斜が急かどうかを判断することができます。

等高線が密集した場所は傾斜が急で、まばらな場所は傾斜が緩いです。

尾根と谷の見分け方

等高線の見方・読み方のポイントが分かったところで、今度は、尾根と谷の見分け方について理解しましょう。 どんな山でも、その地形は基本的に、尾根と谷からできています。尾根と谷は山頂から交互に走っています。谷には沢が流れており、山頂から下流に向かい、最終的に大きな川へとつながっています。

山は尾根と谷からできています。

地形図で見ると、尾根は山頂から下に向かって等高線が出っ張っています。逆に、谷は山頂へ向かって等高線が出っ張っています。 このような特徴をおさえ、山で地形図を眺めると、等高線に対して尾根と谷がどこにあるか分かると思います。

例として、甲子山の尾根と谷を示します。

地図記号

地形図で使われている地図記号は、登山中に現在地を確認するために役立ちます。 民家や橋/堰堤、針葉樹林/広葉樹林や畑が記号で表記されており、周囲の景色と地形図を照らし合わせて確認します。 地形図で使われている地図記号については、国土地理院のHPで地図記号一覧のページがあり、そちらを参照するとよいでしょう。

地図記号一覧
地形図、写真、標高、地形分類、災害情報など、国土地理院が捉えた日本の国土の様子を発信するウェブ地図です。地形図や写真の3D表示も可能。

雲取山山頂付近の国土地理院の2万5000分の1地形図です。広葉樹林/針葉樹林、山頂や登山道の記号が見て取れます。

登山で地図を読むためのアイテム

登山で地図を読むためには、地形図以外のアイテムもいくつか必要になります。併せて用意しましょう。

コンパス

コンパスは、国土地理院の2万5000分の1地形図と一緒に使い、現在地の確認や、目的地へ向けて歩く方向を特定するのに使います。コンパスにも色んなタイプがありますが、地図と合わせて使える、マップコンパスを選びましょう。 コンパスがないと地形図を使った読図ができなくなるので、登山の時は地形図とともに、忘れないように持っていきましょう。

マップケース

マップケースは、登山地図を入れておくケースです。登山中に地図を素早く見るために、ザックにぶら下げて歩きます。 国土地理院の地形図を印刷して入れ、登山のときにいつでも確認できるようにしておくとよいでしょう。

高度計

地形図で現在地を確認する際、高度計があると、より正確な位置を把握できます。周辺の景色と地形図だけでは、だいたいの位置しか分かりませんが、高度計があると、よりはっきりします。 それから、あとどれくらいで山頂につくかのか、または、下山できるのかを認識できるので、とても便利アイテムです。 高度計だけの機能を持った製品もありますが、高度計付きの腕時計もあります。腕時計タイプだと、高度をすぐ確認できるのでおすすめです。

高度計付の腕時計もあります。

登山地図を使ってみよう!3つの手順を紹介

これまで登山地図として、「山と高原地図」および2万5000分の1地形図を紹介しました。いよいよ、これらの登山地図を使って、実際の登山で地図を読めるようにしましょう。 登山地図を使うための準備と読み方を、以下の3つの手順にまとめした。

1.登山前の準備

登山へ行く前の準備として、地形図を使いやすくするため、磁北線や登山ルートを書き込んでおきましょう。

磁北線を引こう

コンパスが示す北は、地球の磁場の関係で、地図上の真北とずれています。そのため、地図に磁北線を書き込み、実際の登山では、その線とコンパスのN極の磁針(赤色)を合わせて使います。 磁北線のずれは、地域によって異なり、北海道で西寄り9°、関東で西寄り7°、沖縄で西寄り4°となっています。 磁北線を地形図へ引くには、分度器の目盛を使って上記の度数だけずらした線を描きます。分度器がない場合は、少し使いづらいですが、コンパスについている目盛を使いましょう。

磁北線を登山の度に毎回描くのは、少し面倒かもしれません。そんな時は、国土地理院HPの地図機能で、磁北線を引くができます。この機能を使い、磁北線を描いた地形図を印刷し、毎回登山へ持って行くようにすればよいでしょう。

国土地理院HPの地図の画面右上で"機能"→"設定"→"磁北線"とクリックして進むと、磁北線の表示設定ができます。赤い斜線が設定された磁北線です。

地形図に登山ルートを書き込もう

「山と高原地図」を見ながら、地形図に歩く予定の登山ルート書き込みましょう。そうすることで、登山当日は、自分が歩く予定のルートと現在地があっているか確認しやすくなります。 ただし、地形図に登山ルートを書き込んでしまうと、等高線が見えにくくなってしまうので、うっすらと書くか、蛍光ペンを使うなどしましょう。

2.登山中に現在地を確認する方法

登山中に、自分が地形図のどこにいるか確認するには、「山と高原地図」、地形図および高度計を使い、周辺の景色から判断します。

「山と高原地図」や地形図に、目印となる人工物、景色、尾根の分岐などの情報が書き込まれているので、それらと周囲の景色を見比べて判断します。それだけでは分からない場合、高度計も確認しましょう。


こまめな現在地確認を心がけよう

現在地は、一度道が分からなくなってしまうと、登山地図や高度計を使ってもなかなか特定が難しくなる場合もあるので、こまめに確認しておく必要があります。 こまめに確認することで、さっきはここまでは進んだから、今はここだ、というように、さらに現在地の把握がしやすくなります。道が分からなくなったとしても、数十分前に確認した地点があったとすると、そこまで一旦引き返すこともできます。 道迷いも未然に防ぐことができるので、登山では、現在地をこまめに確認するクセをつけることをおすすめします。

3.目的地の方向へ歩きたい場合

地形図とコンパスを使って、目的の方向へ向かう手順を紹介します。この方法を使うと、登山道が分岐している場合や、自分が目的地に対して正しい方向へ向かっているか確認することできます。 ただし、この方法を使うには、現在地が地形図上のどこであるか、分かっている必要あります。先ほども書きましましたが、現在地はこまめに確認して、常に把握しておくようにしましょう。

1.地形図上で目的地の方向にコンパスをセット

地形図上の現在地から、目的地の方角へコンパスを向けて、置きます。

三本槍岳の方角にコンパスを向けています。

2.磁北線とカプセル矢印を平行にする

コンパスのカプセル矢印(円盤の中にある赤い矢印)を磁北線と平行になるよう、円盤を回します。

3.胸の前にコンパスをセットする

自分の胸に対してコンパスの進行線がまっすぐ向くようにしてセットします。

4.目的地の方向へ進む

体の向きを変えて、N極の磁針とカプセル矢印の向きを一致させます。そのとき体が向いている方向が目的地への方向です。 この方法で一度セットしてしまえば、目的地に着くまで何度でも、コンパスは目的地の方向を指し続けます。とても便利な使い方なので、ぜひ習得することをおすすめします。

体の向きを変えて、カプセル矢印とN極の磁針の向きを一致させます。

まとめ

登山地図にはどのような種類があるか紹介し、代表的な登山地図である、「山と高原地図」および国土地理院の2万5000分の1地形図の見方・読み方について説明しました。また、登山地図を実際の登山で使うための手順も紹介しました。 登山地図を使いこなせると、自分の体力や実力を把握できるし、登山の行程をしっかり管理できるようになり、道迷いに対する遭難のリスクをかなり軽減できます。また、沢登りや藪漕ぎなど、登山道のないルートを歩くきっかけにもなり、登山の幅を大きく広げることでしょう。 より充実した登山のため、登山地図の見方・読み方は、ぜひ習得しておくことをおすすめします。